米国東部やカナダ南東部に生息するシギ科のアメリカヤマシギ。求愛の際の飛行速度はなんと8kmほどで、「世界で最も遅く飛ぶ鳥」としてギネス世界記録にも認定されています。
アメリカヤマシギはなぜこんなにもかわいいのか?
ぽっちゃりとした可愛らしい体型と、細長いくちばしがチャーミングなこの鳥に魅了される人は多く、アメリカヤマシギが1分間「ただ鳴くだけ」の動画は100万回再生を達成しました。
体をのけぞらせ、おもちゃのように「ビー!」と鳴く仕草がたまりません。人によってはかなりツボにはまってしまうでしょう。
また、アメリカヤマシギは特徴的な顔立ちがあります。彼らの目は、実は頭蓋骨のやや後ろ向きの高い位置にあるのです。
これはアメリカヤマシギの食性が関係しており、アメリカヤマシギの主な食べ物は地面の下にいるワームであるため、食べ物を探しながら真上や背後を警戒することができます。
ただでさえ可愛らしいこのアメリカヤマシギを最も有名にしているのがこのダンス。親子そろってノリノリで踊るこの動画はSNS上で拡散され、大きな話題となりました。
American woodcock searching for worms while her babies practice the move. https://t.co/T9Wt66vQPa
Video: https://t.co/H6z9CBJbDJ pic.twitter.com/gyNIfeLzAp
— Steve Stewart-Williams (@SteveStuWill) September 29, 2020
アメリカヤマシギのおかしな歩き方、なぜ踊る?
このダンスは非常に特徴的で、足だけでなく体全体を揺らして踊っています。確かに可愛らしいダンスですが、なぜこのように踊る必要があるのでしょうか?
アメリカヤマシギの主食は地面の下にいるワームですが、このままでは見つけられません。
そこで、アメリカヤマシギは地面を踏みしだくように動くことで、振動により地面のミミズを地表近くまで移動させたり、地中のワームの動きを察知しているという説が最も有力です。
アメリカヤマシギはダンスをすることでワームを見つけ出す
古くより、地面にいるミミズを取るために木の棒をこすりつけ、その振動でワームを地表におびき出す方法が知られていました。アメリカ・ヴァンダービルト大学のケネス・カターニア(Kenneth Catania)さんによると、どうやらこのミミズの習性は天敵であるモグラから逃げるためなのだそうです。
この体全体で踊るような動きは、実際のところわずかな全体重をかけて地面を踏みしだいて振動を与えており、この振動を感じ取った土中のワームが、モグラのような天敵が接近していると勘違いして土の中を動き回り、これを非常に敏感なくちばしを使って探り、動いたワームを食べるようです。
たまに、アメリカヤマシギは明らかにワームが取れなさそうなコンクリートや固い土のうえでダンスをする様子がみられます。
野鳥保護団体である全米オーデュボン協会によると、アメリカヤマシギは土中のワームが動くときのわずかな音も察知することができると言われており、地面を揺らしながらワームのいそうなポイントを調べているのかもしれません。もちろん、みつかりませんが。
一緒に踊っているヒナはまだ練習中なのでしょうか。アメリカのコーネル大学鳥類研究所によると、アメリカヤマシギはふ化してからわずか3、4日ほどで土の中のエサを探し出すのだそう。
今はまだぎこちない動きですが、いずれは一流のダンサーになって私たちを魅了し、たくさんのご馳走を手に入れることでしょう。
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※エピネシスではより正確なデータブック作成のため、現在定期的な追記を行っております。掲載されていた文章についてはこれで以上となります。
アメリカヤマシギの分布・生息地
コーネル大学鳥類研究所 American Woodcock -The CornellLab-
アメリカヤマシギは北米に生息している唯一のヤマシギの仲間で、おもに北アメリカの東側のおもに湿った森林に生息しており、昼間は森の中で、夜ではより開けた場所でよく過ごします。
この画像のうち、オレンジ色の領域が繁殖地を示しており、水色の領域が繁殖地以外の活動地となっています。これらが重なる紫色の領域では年間を通してアメリカヤマシギを見ることができます。
アメリカヤマシギのほとんどは冬の間は南に移動し北アメリカ東南部の水色の領域にまで移動し、また暖かくなると北の繁殖地のほうに戻っていきます。紫色の領域にいるものはこうした渡りをせず、年間を通して留まっている場合があります。
アメリカヤマシギの渡りは夜間で、群れを作らずに行われ、上記でも説明されている通り非常にゆっくりなペースで移動することが知られています。
アメリカヤマシギの鳴き声
アメリカヤマシギの鳴き声は非常に特徴的で、一回でも聞けばすぐに他の鳥と間違えることはないでしょう。
まるでおもちゃのように繰り返し「ビー、ビー」と鳴きます。
Reference
コーネル大学鳥類研究所 American Woodcock -The CornellLab-
American Woodcock -Audubon-