まるで子どもの落書きのようなくちばしのある奇妙なカエル、ニクティマンティス・アラパパ

国内に生息するカエルは外来種、亜種含め50種ほどと言われていますが、実はカエルの仲間は南極大陸を除いたすべてにの大陸に広く分布しており、現在確認されているものだけでも7,600種以上、そして毎年のように新種が発見され続けています。

なかにはカエルとは思えないような見た目をしているものもおり、今回紹介するのがその一つであるニクティマンティス・アラパパ(Nyctimantis arapapa)です!

ニクティマンティス・アラパパ(Nyctimantis arapapa)


Konrad Mebert -facebook-

まるで子どもが描いた絵から飛び出してきたような、かわいらしい見た目のこのカエルは、ブラジルのバイーア州南部の熱帯雨林にしか生息していない固有種で、非常に長いくちばしのような口と、ほとんど正面を向いたまん丸で大きな目が特徴です。

英語では”Bahia’s broad-snout casque-headed tree frog”と呼ばれており、直訳すると「バイーアヒログチイシアタマアマガエル」になりそうですが、これではあまりに長すぎるかもしれません。

なぜ平たいくちばしを持っているのか?

とても可愛らしいくちばしですが、ではなぜこのような面白い形をしているのでしょうか?

実は、このカエルのオスはアナナス(パイナップル科の植物)のなかに溜まった水を利用し、この中で求愛から交尾、子育てまで行いますが、このカモのような口がまるでフタのような役割を果たし、これにより子育て中のわが子を守っているのです。


Konrad Mebert -facebook-

これは自身の体を利用して巣穴を塞ぐフラグモシス(Phragmosis)と呼ばれる防御手法で、タートルアントやシリキレグモなどが巣を塞ぐことで有名です。

このカエルのくちばしはとても硬くできており、同じ習性を持つ仲間の”Nyctimantis brunoi”が「ブルーノイシアタマガエル」と呼ばれているのも、このカエルのくちばしが角質化して硬いことに由来しています。

▽ブルーノイシアタマガエル(Nyctimantis brunoi)

Renato Augusto Martins CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

ちなみに、このブルーノイシアタマガエルは頭部にある無数の骨棘を頭突きにより突き刺して、同じ地域に生息するマムシの25倍もの猛毒を打ち込む恐ろしいカエルですが、また次の機会にあらためて詳しくご紹介させていただきます。

研究によると、どうやらこのアマガエルはアナナスの葉の中にかなりぴったりと密着して封鎖しているようで、保護調査の一環で研究者がアナナスの葉からこのカエルを取り出す必要があったとき、いくつかの個体はカエルを傷つけないよう引きはがすのにとても苦労したのだとか。


Case Study:Aparasphenodon arapapa (Aparasphenodon arapapa)

どうやらこのカエルはアナナスの葉をえり好みするようで、多すぎず少なすぎず、ほどよく水が溜まっていてぴったりと密閉できるちょうどよい大きさのアナナスを選ぶのだそう。

水が少ないと子育てできない一方、水が多すぎると立ち上がって求愛の鳴き声をあげることができないようです。また、このカエルは葉が少なくなったものを避け、わずかに傾いているものを好んで利用したといいます。

このようにちょうど良い大きさのアナナスを選び、ぴったりと密閉することで捕食者からわが子を守る以外にも、水の蒸発を防ぐことにも役立っている可能性があるのだとか。


Nordeste é a região que possui mais anfíbios e répteis ameaçados de extinção -UNIVERSIDADE FEDERAL RURAL DE PERNAMBUCO-

見た目はまるで日本のインターネットミームのキャラクターである「やきうのお兄ちゃん」のような顔をしていますが、実のところ自身を盾にして我が子を守る、子ども想いの優しいカエルなのでした。

エピネシスでは最近、カモノハシの奇妙な骨格についてご紹介していました!
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また、カエルに食べられてもそのまま消化管を素通りして脱出する昆虫もあわせてぜひご覧ください!
カエルに食べられてもお尻から脱出する昆虫が発見される、神戸大学

Reference
Reproductive site selection in a bromeliad breeding treefrog suggests complex evolutionary trade-offs -RMC-

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