ハチドリの可愛過ぎるいびき、実はミニ冬眠から目覚めるため?

ハチドリ—―名前だけ聞くとどことなく危険な鳥のように思われますが、実際のところはなんとも可愛らしい小鳥で、ハチドリの仲間で最も大きなオオハチドリでも体重は24gとスズメほど、最小のマメハチドリではなんと2gほどしかなく、「世界で最も小さな鳥」としてギネスワールドレコーズにも登録されています。

多くの種類が色とりどりで、大人しく、ほとんど歩くことができないハチドリはただそこに座っているだけで抜群の可愛さを誇りますが、2011年に投稿された「眠るハチドリのいびき」があまりに可愛いとして、10年が過ぎた現在でも人気の動画があります。それがこちらです!

いつまでも聞いていたくなる、可愛らしいハチドリのいびき

しきりにくちばしを開き、「ピー…ピー…」という可愛らしいいびきを立てながらぐっすりと眠る姿にとても癒されますね。

このハチドリはアメシストテンシハチドリ(Heliangelus amethysticollis)というテンシハチドリ属の仲間で、本当に天使のような可愛らしさです。

エクアドル南東部からペルー、ボリビアにかけてのアンデス山脈に生息するこのアメシストテンシハチドリは首元の白い三日月模様が特徴で、オスはこの白い模様の上に光沢のあるとても美しい紫色の模様があるので、この動画に映っているのはメスの個体です。

▽オスのアメシストテンシハチドリ

このハチドリのいびきを撮影した鳥類学研究者のティモシー・フォレスターさんによると、ハチドリは調査研究の一環で安全に保護しているもので、動画内で常に聞こえる「ブーーン」という音は呼吸により消費する酸素量を測定する機械によるものだそうですが、撮影するとなぜか音が大きくなってしまったのだとか。

ハチドリは基本的にいびきをかかない

この記事では便宜的に”いびき”と紹介していますが、厳密に言うとこの音はただのいびきではないことに注意しなければなりません。

というのも、実はハチドリの仲間は、とても寒い冬にはエネルギーを節約するために、体温も心拍数も劇的に低下させる”ミニ冬眠”を行うことが知られています。

トーパー(Torpor)と呼ばれるこの特殊な休眠状態では、代謝活動を最大95%ほども低下させることができ、日中は40℃近い体温を1桁台にまで落とし、毎分1,260回の心拍数はなんと200回以下にまで低下させることが可能です。

ティモシーさんによると、おそらくこの「いびき」のような音はミニ冬眠から目覚める際、体を正常な代謝状態に戻すために酸素の吸気量を増やそうとして起きたものであり、簡単に説明すると”深呼吸”のようなものなのだそう。


Sleeping hummingbird “snores” in Peru -Youtube-

つまり、このハチドリは睡眠とは異なる特殊な休眠状態にあり、聞こえる音は厳密には「いびき」とは呼べないものですが、とはいえ可愛いことに変わりはなく、このハチドリは病気などではないのでどうぞご安心ください!

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Reference
Sleeping hummingbird “snores” -The Guardian-
Amethyst-throated Sunangel -eBird-
Hummingbird Torpor Looks Strange but It’s Totally Normal -Birds&Blooms-

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