寄生虫は太った魚を釣りやすくしてくれる可能性――北海道大学

釣った魚に寄生虫がいると気持ち悪くなってしまいますが、必ずしも釣り人にとって悪いものとは言い切れないようです。

イワナは太っているものほど釣りにくい傾向にありますが、寄生虫に寄生されると逆に釣りやすくなることを示唆した研究成果が北海道大学により発表され、先月21日に『The Science of Nature』にてオンライン掲載されました。

寄生虫は宿主である魚のエネルギーを搾取するため、一般に寄生された魚はだんだんと活動性が低下して弱ってしまいます。

北海道大学の研究者らは、寄生虫に寄生された魚は弱るので釣られにくくなるのではないかと考え、寄生性カイアシ類のサルミンコーラとサケ科魚類のイワナを対象に、感染の有無が釣られやすさに与える影響ついて調べました。


口に寄生する甲殻類のサルミンコーラ。黄丸で囲まれているのはサルミンコーラの2つの卵塊です。
北海道大学のプレスリリースより

寄生虫は太った魚を釣りやすくしてくれる

計312匹の捕獲されたイワナを詳しく調べると、釣りにより捕獲されたイワナの寄生率は37.1%、電気ショックにより捕獲されたイワナの寄生率は34.0%で、釣られやすさに大きな差はみられませんでした。

しかし、寄生された魚のサイズなどを詳しく調べると、魚の肥満度が高いほど釣られやすく、肥満度が低いほど釣られにくいという関係性が明らかになりました。


青の点線グラフが感染してないイワナ、オレンジの実線が寄生されたイワナのグラフ。感染していない個体は太っているほど釣られにくいが、感染個体は太っているほど釣られやすくなる。
北海道大学のプレスリリースより

どうやら当初の予想通り、肥満度の低い感染個体はすでに弱っているため、活動性が低下した結果として釣られにくくなりますが、意外にも肥満度の高い感染個体は動ける体力があるため、寄生虫に奪われたエネルギーを取り戻そうと積極的にエサを食べようとして釣られやすくなるようです。

せっかく身の大きい魚が釣れたとしても、口の中に寄生虫がいればちょっと気持ち悪いかもしれませんが、太った魚を釣り上げる確率を上げてくれるという点では釣り人たちの役にたっているかもしれません。

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Reference
寄生虫に感染した魚は釣られなくなる?~渓流河川のイワナで検証~(地球環境科学研究院 准教授 小泉逸郎)-北海道大学-
Parasites either reduce or increase host vulnerability to fishing: a case study of a parasitic copepod and its salmonid host -SpringerLink-

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