本体よりも大きな尻尾を持つ、ボルネオ島にしかいないフサミミクサビオリス

動物界アイドルの重鎮とも言える存在であるリス。その愛らしい要素は枚挙に暇がありません。つぶらな瞳、手のひらに収まる可愛らしいサイズ、リズミカルな仕草、すべてが曲線で構成された愛らしいフォルム…

そしてなんと言っても、もふもふとした大きな尻尾はその魅力を語る上では欠かすことはできません。

しかしながら世界は広いもので、リスの仲間は300種ほど存在しますが、なかには可愛らしさの全てを尻尾に全振りしたような、とんでもないリスが存在します。


Wild Green Memes for Ecological Fiends -facebook-Photo by John Moo WM.

フサミミクサビオリスは東南アジアにあるマレー諸島のボルネオ島に生息している1属1種の貴重なリスです。

このリスが生息しているボルネオ島は面積が世界第3位の島で、面積は日本の1.9倍もありますが、このうちフサミミクサビオリスは標高1,100m以下の低地原生林の丘陵地に生息しています。

本体よりも大きい尻尾を持つフサミミクサビオリス

このリスは大きさは頭胴長が33~35cmと、日本に生息するニホンリスの1.5倍ほどもありますが、圧倒的な尻尾の存在感のせいで体の方はあまり大きそうには見えません。


Borneo’s ‘carnivorous’ squirrel actually mainly eats one kind of seed -New Scientist-

実はこのフサミミクサビオリスは哺乳類のなかで体に対して尻尾の比率が最も大きいことで知られており、尻尾の長さは頭胴長に匹敵する30~34cm、体積はなんと本体の130%にもなります。

リスはそもそも尻尾が大きいものですが、アカリスでさえも90%に届かないため、尻尾の体積は一般的なリスよりも1.5倍も”増量”しているというわけです。

フサミミクサビオリスはなぜこれほどまでに大きな尻尾を持っているのか?

フサミミクサビオリスがなぜこれほどまでに大きな尻尾を持っているのかについては現在も研究が進められており、詳しい理由についてはわかっていませんが、最も有力な説では防御手段として利用しているのではないかと言われています。

この大きな尻尾はリス本体よりも大きいため、簡単に自分の身を隠すことができるうえに、自分をより大きく見せることができます。

また、もし仮に捕食者に襲われても尻尾を盾にすれば、捕食者が実際に掴むことができるのは毛だけであり、すり抜けられる可能性が高くなります。

他にも求愛や仲間とのコミュニケーションにも使われているのではないかとの見方もあり、この大きな尻尾の謎については今後の研究を待たなければなりません。


Forgotten species: the exotic squirrel with a super tail -MONGABAY-

先住民からは吸血リスとして恐れられている

どうみても可愛らしいフサミミクサビオリスですが、実は一部の先住民の間ではかなり凶暴で恐ろしい肉食性の動物であると伝えられており、現地では”吸血リス”と呼ばれることがあるのだそう。

ボルネオ島内陸部の森林で暮らすダヤク族の伝承によると、このリスはホエジカを待ち伏せて襲い掛かり、頸動脈に噛みついて失血死させ、肝臓や心臓などを食べるのだそう。

なんでも、ダヤク族の狩り人たちはしばしば肉は手つかずのままで内臓だけが荒らされた鹿をみつけることがあるそうで、先住民の人々はこのリスに食い荒らされたものと信じており、鶏などの家畜なども襲う生き物と考えられているのだそうです。


Forgotten species: the exotic squirrel with a super tail -MONGABAY-

ボルネオ島の森で一番硬い種子を食べることが最新研究で明らかに

このリスの伝承についてはさておき、興味深いことにこのフサミミクサビオリスは他のリスにはみられないような非常に特殊な歯を持っており、とても硬い種子を食べていることが明らかになっています。

ミシガン大学の研究によると、フサミミクサビオリスは上下の顎にのこぎり状の門歯と、非常に強力な咬筋を持っており、ボルネオ島の森林にあるオニカンラン、およびバンレイシ科の植物(Mezzettia leptopoda)の非常に硬い種子をほとんど独占して食べることができるのだそう。

Borneo’s Infamous “Vampire” Squirrels Revealed To Actually Eat… Seeds -IFL SCIENCE-

見かけによらずとても強かに生き抜いているフサミミクサビオリスですが、実は絶滅危惧種に指定されており、現在も詳しい生態調査が進められている真っ最中です。

このように変わった姿や生態を持っている動物は保護活動の資金が集まりやすい傾向にありますが、一方で違法な密猟などが増える恐れもあり、研究者たちは注意を呼び掛けています。

最近、エピネシスでは家族で尻尾を絡ませて眠る、とっても可愛らしい習性を持つサルについてご紹介していました!
尻尾を絡ませて眠るサル、ティティモンキーの夫婦が理想的すぎる

また、大きな尻尾を抱いて眠る習性を持つユキヒョウの記事もぜひご覧ください!
太くて長い尻尾の意外な使い道、ユキヒョウは自分の尻尾を抱き枕のように使う

和名

フサミミクサビオリス

英語名

Tufted ground squirrel

学名

Rheithrosciurus macrotis

生息地

ボルネオ島のみ

分類

ネズミ目リス科Rheithrosciurus属macrotis
・1属1種

食性

種子、果物、昆虫

保全状況

VU-危急種

Reference
Extreme ecological specialization in a rainforest mammal, the Bornean tufted ground squirrel, Rheithrosciurus macrotis

Borneo’s Infamous “Vampire” Squirrels Revealed To Actually Eat… Seeds -IFL SCIENCE-

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