史上最大級の翼竜、ケツァルコアトルスの模型が怖いと話題に

しばしば生物の学名には神の名前にちなんで名付けられることがあります。例えば、これまで生きている姿を誰も見たことのない世界最大級のハチ、メガララ・ガルーダなどの比較的小さな昆虫につけられることもありますが、この翼竜の場合は決して大げさなものではありません。

アステカ文明における農耕や風などの神「ケツァルコアトル」にちなんで名付けられたこのケツァルコアトルスは約7,000万年前に地球上に生息していた最大級の翼竜であり、そして史上最大級の飛翔動物でもあります。

ケツァルコアトルスの等身大模型が巨大過ぎて怖い

このケツァルコアトルスは世界各地に等身大模型が設置されていますが、あまりに巨大過ぎて怖すぎるとしばしば話題になることがあります。その等身大模型がこちら。


Pictures from inside the Natural History Museum -TWOFORTYEIGHTAM-

こちらの模型は現在、クウェートのシェイク・アブドゥッラー・アル=サラーム文化センターの博物館に展示されているもの。
ケツァルコアトルスの体高は5m以上もあり、その大きさはキリンにも匹敵するほどですが、頭部の大きさは3mもあるので上に行くほど圧迫感があり、あまりに不釣り合いなバランスが恐怖を駆り立てます。
ちなみに翼開長は10m以上もあり、これはF-16戦闘機とほぼ同じ。

あまりに巨大なため近年ではほとんど飛べなかったという説も

最新研究によると体重は250kg程度とされていますが、同じくらいの大きさのキリンが1,000kgを超えるため、体重はかなり軽く感じるかもしれません。しかし、これでもかなり”増量”したほうで、かつては体重約70kgとされていました。

この巨大生物がどのようにして飛行していたかについては現在も活発に議論が繰り広げられており、研究者たちは長い間、ケツァルコアトルスをどうやって飛ばすかについて考えていましたが、2010年頃には「本当に飛んでいたのか」という議論が加速し、去年2022年には名古屋大学と東京大学によりついに「ほとんど飛ばなかった」という研究成果が発表されました。

これによると、現生の大型鳥類は風を利用した滑空飛行を行いますが、航空力学に基づいて解析を行った結果、プテラノドンなどの翼竜は滑空能力が得意でしたが、ケツァルコアトルスなどの大型翼竜は滑空にとても不向きで、ほとんど飛ばずに陸上生活をしていた可能性が高いのだといいます。

あまりに巨大なため等身大模型の製作も大変

こちらは2018年にシカゴのフィールド博物館の改装に伴って制作されたケツァルコアトルスの制作風景です。


CHICAGO FIELD MUSEUM | STANLEY FIELD HALL FLYING PTEROSAURS

ケツァルコアトルスを立たせた姿と飛んでいる姿の2つの模型を作製していますが、あまりに巨大なために美術チームも大変…


CHICAGO FIELD MUSEUM | STANLEY FIELD HALL FLYING PTEROSAURS


CHICAGO FIELD MUSEUM | STANLEY FIELD HALL FLYING PTEROSAURS

最後は部品ごと分けてトラックに詰み込み、博物館で組み立てるだけです。下の写真はトラックからフィールド博物館に運び込む様子を撮影したものですが、模型がリアルなだけに、まるで恐竜映画のワンシーンのよう…


Pterosaur Models Go on Display -EVERYTHING DINOSAUR-

この写真を見ると、あらためてケツァルコアトルスの巨大さがよくわかります。かなり大型のトラックですが頭のサイズだけでこの大きさなので、生きているケツァルコアトルスを入れるにはこのトラックではあまりに小さすぎるようです。

日本には現在、こうした実物大の復元模型はないようですが、機会があればぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか!

Reference
巨大翼竜はほとんど飛ばなかった ~絶滅巨大飛行生物と現生鳥類のソアリング能力の比較~ -東京大学 大気海洋研究所-

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