近年、ハトの羽に紫外線を当てると奇妙な模様が浮かび上がる…という内容の動画がSNSを中心に拡散して話題になっています。
▽その動画がこちら。
動画では確かに、翼を広げたカワラバトに紫外線をあてると、光があたった部分に奇妙な赤い模様が浮かび上がりました。それはまるで魔法によって浮かびあがった古代文字のよう…
動物のなかには、私たちの目では通常見ることができないこうした隠されたパターンを持つものが多く存在しており、昆虫や魚、鳥類など実にさまざまな生き物が紫外線により蛍光することが知られています。近年ではカモノハシも紫外線により蛍光をすることが初めて明らかになりました。
カモノハシに紫外線を照射すると光ることが明らかになる、ノースランド大学鳥類でも、例えばニシツノメドリという鳥では紫外線をあてると、今回のハトの動画と同じようにクチバシが光ります。
Puffin beaks are fluorescent and we had no idea https://t.co/HkBzEkFycr pic.twitter.com/h8Suz1bscI
— CBC Nova Scotia (@CBCNS) April 6, 2018
ハトの羽根が光る動画は本物?
オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州に住むハトのブリーダー・トレーナーのアダム・アーチャーさんは、自身のYoutubeチャンネルでこの動画の真偽について解説を行いました。アダムさんによると、この動画は確かに「本物」とのこと。「ただし、自然のものではありません。」とアダムさんは付け加えました。
Youtube『UV Fluorescent Pigeon Wings – Viral Video Explained!』
紫外線をあてたハトの羽根に浮かび上がった模様がなんらかの文字に見えた人も多いでしょうが、実はこの模様は本当に中国の文字であり、この動画のカワラバトは鳩レース用のハトなのだそう。
鳩レースはハトの帰巣本能を利用したもので、鳩の所有者が同一地点から鳩を放ち、戻ってくる速さで競うというもの。
この鳩レースは中国の明王朝後期の時代から始まり、現在でも鳩レースは中国で活発に行われています。CNNによると、北京には約10万人もの鳩ブリーダーがいるのだそう。
中国国内で非常に人気の高い鳩レースでは巨額のお金が絡むことも少なくありません。優勝経験のある鳩はしばしば数千万~1億円以上で取引されることもあり、大会の賞金は数億円にものぼります。
これだけの大金が絡むと、例えば鳩レースに参加したものとは異なるハトを使ってゴールしたように見せかけるというような、不正を企てる者が必ず出てきます。
こうしたことを防ぐために、多くのクラブでは大会に出場するハトにこうしたUV蛍光スタンプを押して出場する個体を識別しているのだそうです。
Youtube『UV Fluorescent Pigeon Wings – Viral Video Explained!』
従って、この動画は映像加工ではない「本物」ではあるものの、浮かび上がったこの模様は人工的なもので、ふつうのカワラバトの羽根に紫外線をあててもこのような模様は現れません。
とても残念な結果となりましたが、うっかり信じてしまいそうなところが生き物の面白いところです。