サメのヒレだけを切り取って海へと捨てる「シャーク・フィニング」とは?

2018年10月5日


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サメの背びれや尾びれの部分を乾燥させた中華料理食材であるフカヒレ。古くは皇帝にも捧げられていたほどの高級食材であり、中国ではフカヒレ料理で客人をもてなすことは一種のステータスシンボルにもなっている。フカヒレ自体には風味が無いものの、独特の触感や滑らかな舌触りが古来から親しまれてきた。近年では、豊富に含まれるコラーゲンの美容効果が注目を集めており、女性に人気の食材となっている。しかし、このフカヒレが現在は世界各国で食べられなくなってきているというのだ。


Shark Fin (Chinese Restraunt, Matsudo) flickr photo by t-mizo shared under a Creative Commons (BY) license

日本ではフカヒレの産地として宮城県の気仙沼市が有名で、日本全体のサメの水揚げ量の8割以上を占めるという。主に混獲(他の魚を獲るために一緒に獲れてしまうこと)によって水揚げされたサメは、フカヒレをはじめとして、身はかまぼこやはんぺんなどの練り製品として、軟骨はサプリメントへ、内臓は肝油へ、皮や頭部は工芸品や素材として余すことなく利用される。

しかし、海外では必ずしもそうはいかない。高級食材として高く売れるサメのヒレだけを狙って、サメの乱獲が相次いでいるのだ。しばしば――サメを獲ったときに尾ビレや背ビレ、胸ビレ、尻ビレなどのヒレを余すことなく切り取ってから、海に生きたまま「投棄」されることがある。この「フィニング」と呼ばれる乱獲方法は世界中の海洋保護団体や動物愛護団体から厳しく非難されている。

乱獲者にとって必要なのは、高く売れるサメのヒレだけであって他の部分は必要ないのだ。もしサメの体をまるごと持って帰ったとしても、日本のようにサメの他の部位を利用するような文化あるいは技術がないことも理由の1つとなっている。限りある船舶のスペースに、いかになるべく多くのサメのヒレや価値ある魚を積むことが重要なのだ。ヒレを切り取られたサメは基本的に浮袋(うきぶくろ)を持たないため、サメは生きたまま、成す術なく海の底へと沈んでいくのだ。

サメは、このような乱獲には弱い生き物である。海における食物連鎖の頂点に位置するサメは、他の魚のように大量の卵を産んで、できる限り多くの個体を残すような繁殖戦略ではない。卵を体内でふ化させてある程度育ててから出産するという、私たちほ乳類の「妊娠」のような産み方をするものも多い。(参考記事:サメの驚くべき繁殖方法の多様性とは?)

最も妊娠期間が短いとされるウチワシュモクザメでも4~5か月、ヨシキリザメでは9~12か月、アブラツノザメでは20~24か月にもなる長い妊娠期間が必要になるのだ。これらの理由から、多くのサメは1~2年ごとにしか繁殖することができない。

さらに、生まれた子供もすぐに繁殖できるようになるわけではない。サメは性的に成熟するにも長い期間が必要になる。ヨシキリザメでは4~6年、アブラツノザメやドタブカではなんと20年以上もかかると言われているのだから驚きだ。このようにサメは乱獲によって急激に個体数が減少しても、再び回復するには長い時間を要するのだ。


Fresh shark fins drying on sidewalk flickr photo by nicwn shared under a Creative Commons (BY-SA) license

ヒレだけを切り取って海に捨てる行為「フィニング」は、多くの国で禁止されている。しかし、取り締まりが不十分である国では監視をくぐり抜けて行うことはそれほど難しい行為ではなく、未だに多くの国で行われている。しかし近年では、この流れを受けてアメリカではフカヒレを目的とする漁は全面的に禁止され、ハワイやカリフォルニア州ではヒレの売買すら禁止するという先進的な法律が施行されている。最もフカヒレの需要が高い中国でも、ホテルやレストランなどでフカヒレの代替素材を使った料理が提供されるようになったり、中国政府の行事にフカヒレ料理が禁止されるなどといった取り組みが為されている。

これらの活動は決して「サメ漁」を禁止するものではない。どうしても混獲してしまうサメが出てしまうし、サメを使った商品や製品は今や現代においては切り離せない存在である。問題となるのはサメを”効率よく殺す”ことに特化したフィニング行為であって、サメ漁そのものは問題ではない。

日本で混獲されたサメのフカヒレを食べなくなったところで、海外で年間1億匹ものサメを殺しているフィニング行為の抑止力にはならない。「フィニング」が行われていることを知り、それを多くの人々に伝え、サメの保護に関連する活動に参加したり寄付をする――日本にいる私たちにも、できることが必ずあるはずだ。

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