卵、共食い、ミルクまで――サメの驚くべき繁殖方法の多様性とは?

2018年9月4日


Great White Shark flickr photo by Elias Levy shared under a Creative Commons (BY) license

生物の繁殖戦略は、ときに仲間の犠牲の上に成り立っている。例えば魚類がいい例で、数百~数百万もの多くの卵を産む。大人に成長するまでに、多くの子どもが厳しい自然の洗礼を受けて淘汰され、生き残った一握りの個体だけが後世へと子孫を残すことができるのだ。そんな魚類の”常識”のなかでは、サメはかなり特殊だろう。最も注目すべき点はサメの繁殖方法の多様性である。サメは全世界で500種ほど存在するが、卵を産むもの、卵を胎内で育てるもの、胎盤で育てるものなど、驚くほど数多くの方法で繁殖を行っているのだ。

卵生のサメ

魚の卵といえば小さな丸い粒々を想像するが、サメの卵は驚くほどユニークだ。サメにしては締まりのないふっくらとした体型のナヌカザメは10cmほどの袋状の卵を産む。上下についている螺旋状のひもは岩場や海藻などに絡みついて波に流されないためのものだ。半透明の袋の中には卵黄があって、やがて卵内には卵黄により育ったナヌカザメの稚魚が見られるようになる。同じような卵を産むものにトラザメもいるが、どちらともふ化するまでにはなんと10か月以上もかかるという。


237|365 Shark eggs. flickr photo by shes_so_high shared under a Creative Commons (BY) license

サメの卵の中でも特に驚くべきものはネコザメの卵だ。ナヌカザメの卵とは打って変わってドリルのような形状の卵を産む。産卵すると卵はすぐに硬くなり、ネコザメはこれを口で運んで岩場の割れ目に挟み込んだり海藻に引っ掛けて固定する。

640px-Horn_shark_egg_morro_bayby devra from los osos [CC BY 2.0 ] wiki commons

卵の大きさは10数cm程度で、ふ化するまでには1年ほどかかり、20cmほどの稚魚が出てくる。ネコザメは日本沿岸に広く生息しているため、運が良ければ海岸にうち上げられているものを見ることができるだろう。


20080203-BareIsland052 flickr photo by taso.viglas shared under a Creative Commons (BY) license
卵をくわえて場所を探すネコザメ。体長は1mほどで、顔つきはネコに似ていて愛らしいが、その外見によらず奇妙な形の歯を使って硬い貝を砕いて食べるため「サザエワリ」とも呼ばれている。

ちなみに、サメと同じ仲間であるエイも非常に面白い形状の卵を産む。ガンギエイは四隅に突起のある卵を産む。この突起は空洞になっていて、卵内と海水を入れ替えることができる。表面は粘着性で、岩場などに固着して波に流されないようになっている。これらのサメやエイの卵は、海外では総称して”人魚の財布”(mermaid’s purse)と呼ばれているそうだ。


Mermaid’s purse flickr photo by Kyle Hartshorn shared under a Creative Commons (BY) license

胎生のサメ

魚類は通常、メスが産んだ卵にオスが精子を海中で放出させて受精させるが、サメは交接器(クラスパー)を持っており、メスの胎内で直接受精を行う。つまり”交尾”をする魚類なのだ。サメが交尾をするとき、オスはメスの胸ビレを噛んで交尾中の体勢を保つ。この様子は鮫(サメ)の漢字の語源にもなっている。

受精した卵をそのまま産む場合は卵生となるが、一部のサメは卵を産まずに胎内で育てる。稚魚は卵の中で卵黄から栄養を貰いながら母親の胎内で育ち、ふ化してから体外へと産み出されるいわば”妊娠”を行う。アブラツノザメやジンベエザメがこの形式で子育てを行うことが知られており、ジンベエザメではなんと約300個もの卵を胎内で育てる。

オオメジロザメやメジロザメ、シュモクザメの場合は少し特殊だ。子供のサメの体に繋がっている大きな卵黄が、母体の胎内にくっついて、まるで胎盤のようになるのだ。このような形式はマダラトビエイやナンヨウマンタ、アカエイなどのエイ類にも多く見られる。

体長が6mを超えることもあるホホジロザメは、胎内でふ化した子供のサメが、母親が作り出す未受精卵を食べてさらに成長する。これが卵食型と呼ばれるものだ。本来、卵は稚魚が育つための栄養がたっぷりと入っているため、子育てを行ううえでかなり合理的な選択といえるだろう。胎内のサメは卵をたくさん食べるため、子供のサメはお腹がぷっくりと膨れ上がる。

なかには衝撃的な方式もある。シロワニと呼ばれるサメは、未受精卵だけでなく、胎内で育っている兄弟のサメを食べる。母親のお腹の中でいわば”共食い”を行うのだ。子宮(厳密には輸卵管)は2つあるため、生き残るのはそれぞれの子宮に1匹ずつとなる。母体内から既に、弱肉強食の世界が始まっているのだ。

サメの驚くべき繁殖戦略の全容はまだ明らかではない。ホホジロザメに関しては2016年に面白いことが判明した。なんと、妊娠初期では子宮の内壁が大量のミルク状液体を分泌して子供のサメに栄養を与えることが沖縄美ら島財団総合研究センターの研究によって明らかとなったのだ。

このような形式はアカエイやオニイトマキエイでは既に知られていたが、サメでは初めての発見であった。このホホジロザメに限っていっても、寿命や成熟期間、妊娠期間、出産場所は未だ謎に包まれている。次の発見は一体どのようなものだろうか、今後の研究に注目が集まる。

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