深海生物に赤色が多い理由とは?


The Hidden Ocean, Arctic 2005: July 25 Log flickr photo by NOAA Ocean Explorer shared under a Creative Commons (BY-SA) license

水深200mよりも深い「深海」では、地上や浅海では見られないような奇妙な外見をした生物が多い。高い水圧や低温に耐え、光の届かない暗闇の中で外敵を避け、生きるための餌と子孫を残すためのパートナーを探す――深海という極限の環境が、そこに生きる生物たちに様々な多様性を生み出したのだ。

深海生物の奇妙な性質の1つに、体の色が挙げられる。暗闇が支配する深海では、暗闇に紛れるために黒や灰色、茶色など暗い色の生物が大多数を占めるが、その一方で赤い体色を持つ生物が魚類や甲殻類をはじめ、タコやクラゲに至るまで一定数見られるのだ。一見すると派手で目立ちやすい、赤い体色が深海生物に多い理由とは?

実は、ほとんどの深海生物は赤い光を見ることができないのだ。それもそのはずで、赤い光は深海にまで届かないからである。海が青く見える理由(参考記事:水はなぜ青く見えるのか?)もそのためだ。水はわずかに赤色の光を吸収する性質があるので、深海までに赤い光は届かない。

ある物体が「赤く見える」ということは、その物体が「赤色の光だけを反射する」性質があるということだ。しかし、深海のように赤い光そのものが入ってこない場合、赤い光が反射されることはないので、その物体が赤に見えることはない。このような理由から、深海の生物の多くは赤色が見えることはないし、赤色が見える必要もないのである。赤い体は深海において暗闇そのものなのだ。

逆に、そんな深海の”常識”を逆手にとった生物もいる。深海生物には珍しくオオクチホシエソは赤い光を見ることができるのだ。オオクチホシエソは目の下に発光器を備えており、蛍光タンパク質による発光を赤いフィルターを通すことによって、赤い光として放射させることができる。人間における赤外線センサーのように、この赤い光に照らされた深海生物は自らが発見されたと気付くことなく、オオクチホシエソの大きなアゴの餌食となる。深海の”赤”は身を守ることもあれば、脅威にもなりえるのだ。