credit:SciNews「White bellbirds produce loudest bird call ever recorded」
2019年10月、アマゾンの熱帯雨林に生息する鳥が「世界で最も鳴き声が大きい鳥」として認定された。
スズドリ、英語では”white bellbird”と呼ばれているが、その鳴き声は「鈴を転がすような声」とは程遠い。雄は白鳥のように美しい白色で、体重約250gという小柄ながらも、雌を引き付けるために発するその声はまるで、破壊光線、あるいはレーザービームでも発しているかのような”機械音”にも聞こえる。
スズドリ(学名:Procnias albus)はハトほどの大きさの鳥だ。ブラジル北部の熱帯雨林に生息しており、雄と雌とで特徴が大きく異なる。雄はミミズのようなものをクチバシでくわえているように見えるが、これはニワトリなどにもみられる肉垂(にくすい)で、雌に対して健康で強い個体であることをアピールする役割がある。
一方で、雌は緑がかった色をしており、肉垂もない。姿だけみると全く違う種類の鳥にすら思えるが、それでもやはり、雄との最も大きな違いは”全く鳴かない”ということだろう。
アメリカのマサチューセッツ大学アマースト校とブラジル国立アマゾン研究所の研究者らは、オスのスズドリの標本を詳しく調べるなかで、分厚くて輪郭のはっきりした腹筋に肋骨が埋もれているという特殊な構造を見い出した。
これまでにスズドリと、その鳴き声に関する論文はまだ誰も発表しておらず、研究者らはこの特殊な構造がスズドリの大きな鳴き声にどう関係があるのかを調べることにした。
Hector Bottai [CC BY-SA 4.0], via Wiki Commons
合同研究チームはアマゾンの熱帯雨林で、幸運にも雄と雌が同じ木にいる場面に遭遇し、観察と録音を試みた。雄は初めに、まるで演劇のように、大げさに振り返りながら最初の鳴き声をあげた。続けて、今度は雌に向かってしっかりと鳴き声をあげた。しかし、雌はその求愛を受け入れなかったようで、雄から数mの距離を取ったという。
興味深いことに、経験豊富な雌のスズドリは雄の求愛からではなく、雄が発する大きな鳴き声を避けるために、しばしば飛んで逃げることがあるのだという。少なくとも研究チームらは、求愛に成功したスズドリを観察することはできなかった。
そのあまりにも大きな音は、近くで聞いている雌の聴覚に何らかの悪影響を及ぼしているのではないかと研究者らは考えているが、今回の研究からは明らかにすることはできなかったという。
研究者チームは、これまで世界で最も大きな鳴き声を持つといわれていた、同じアマゾンに生息するムジカザリドリの鳴き声も録音した。しかし、録音データを解析すると、なんとムジカザリドリよりもスズドリの鳴き声の方が大きいことが明らかになったという。
その音の強さは何と最大125dB(デシベル)。これは自動車のクラクションを上回り、落雷の音にも匹敵する。ほぼすべての人が耳に痛みを感じ、聴覚機能にも異常をきたすほどの大音量だ。今回の研究で、スズドリはムジカザリドリよりも約10dB以上も高いことが明らかになり、かくして世界で最も大きな鳴き声を持つ鳥は、このスズドリであることが証明されたのだ。
また、今回の研究によって鳴き声(音圧)が大きいほど、鳴く時間が短くなるという関係性も明らかになった。このようなトレード・オフの関係は、単純に私たちが大声を出そうとすると呼吸が長続きせず、小声なら長く続くというような呼吸器能力の限界によるものと研究チームは仮説を立てているが、当初の疑問であったスズドリの特殊な体の構造と、大きな鳴き声との関連性を明らかにすることはできなかった。
求愛のために発する大きな鳴き声によって、逆に雌を遠ざけるようでは本末転倒だ。これは私たち人間にとっても、良い教訓話になるかもしれない――
現在よく読まれています
- 車に踏まれても潰れない異常な強度を持った昆虫の秘密が明らかになる、カリフォルニア大学・東京農工大学
- 抹茶には抗うつ効果があることが明らかになる――熊本大学
- アフリカジャコウネコのミルクの飲み方が下手過ぎると話題に
- ホホジロザメを料理して食べた中国の配信者に240万円もの罰金が科せられる
- ラッコの水槽掃除がめちゃくちゃ過酷な理由とは?鳥羽水族館がYoutubeに動画を公開
- 単独飼育なのに突然出産したシロテテナガザル、その謎が明らかに
- 蚊は血を吸い過ぎて爆発はしないが、お腹の神経索を切断すると血を吸い続けて破裂する(閲覧注意)
- 家に住みついたキツネの親子のお引越し動画が可愛すぎる
- 魚がウナギを口移しで送り込む謎の動画が再生数1,000万回を突破、「不気味過ぎる」と大きな話題に
- 逃げるリーチュエと追いかけるクロコダイル、ギリギリの追跡劇
- グンタイアリに噛みつかせることで傷口を縫合するライフハック
- オンデンザメの目に寄生して盲目にする謎の寄生虫「オマトコイタ」とは?
- ハリガネムシに寄生されたカマキリが水に飛び込むメカニズムが明らかになる――神戸大学ら
- Twitterで「猫のうんこ顔選手権」が開催、さまざまなトイレ事情のある猫ちゃんが集まる
- 有袋類ヒメフクロネコのオスは性欲が強すぎて早死にしている可能性、サインシャインコースト大学
- 飢餓になると逆にお腹が膨らむ?クワシオルコルとは?
- バウムテストの解釈一覧、あなたが描いた木から性格を見抜きます!
- 宮城県の寺院で4つ目のカモシカが目撃される、「神の使い」との声も
- マンハッタンのとある区画にしか生息しないアリ、マンハッタンアリとは?
- サソリはブラックライトを使って簡単に探すことができる