ナシ園を荒らす謎のイモムシが実は新種、「ナシコスカシバ」と命名

京都府の京丹後市内で発生していた、樹皮の下を食害する謎のイモムシが、実は新種の蛾であることが鳥取大学と京都府病害虫防除所、京都府農林水産技術センター丹後農業研究所との共同研究により明らかになった。

2017年1月頃に、京丹後市内にあるナシ園で謎のイモムシが樹皮下を食害しているとの連絡を受けた京都府病害虫防除所は、幼虫を採取して鳥取大学農学部に調査を依頼。しかし、DNA配列を調べてどのような種なのか割り出そうとしても判然としなかったという。

同年の6月にようやく蛹(さなぎ)と、性フェロモンのトラップで誘き出された成虫が採取され、再び調査した結果、新種のコスカシバの仲間であることが明らかになったという。
コスカシバは幼虫の状態で越冬する蛾で国内に約50種ほど存在しており、いくつかの種はブドウやサクラ、ウメ、モモなどの果樹害虫として知られている。また、成虫の姿はハチにそっくりで、擬態をしていると考えられている。

ナシコスカシバ
鳥取大学のプレスリリースより。
ナシコスカシバの成虫。腹部に太く白い帯がある。

今回発見されたコスカシバの一種は、ナシ園で発見され、ナシの樹皮下を食害することからナシコスカシバ(Synanthedon nashivora)と名付けられた。種小名の”nashi”はそのままナシを意味しており、”vora”は「貪り食う」「食欲旺盛」といった意味がある。
他のコスカシバ同様にハチに似た姿をしており、腹部は裏側から見たときに白い帯があるといった特徴を備えており、他のコスカシバとの区別はそれほど難しくないという。

新種の発見だけでも学術的に大きな意味がある一方で、発見されてから新種であることを速やかに確認し、加害部位や性フェロモンの成分、個体数の増減パターンを調べ、早急にナシコスカシバの防除に役立てたことは、農業関係者および防除関係者にとっては非常に良い前例となった。
この論文は、日本蛾類学会が発行する蛾の学会誌『Tinea』に掲載されている。

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