クラゲに触れていないのに刺されるという奇妙な現象の理由が明らかに

2020年02月15日

Cassiopea - Upside down Jellyfish
Cassiopea – Upside down Jellyfish flickr photo by prilfish shared under a Creative Commons (BY) license
サカサクラゲの一種。

サカサクラゲ

サカサクラゲは、その名が示す通り上下逆さまになって生活するクラゲだ。このクラゲは体内に褐虫藻(かっちゅうそう)という藻類を共生させており、褐虫藻が光合成によって作り出した養分を貰って必要なエネルギーの大部分を賄っているため、積極的に獲物を捕らえる必要はない。そのため、刺胞(毒針を発射する細胞)の毒は弱く、”ほぼ無害なクラゲ”とされてきた。

クラゲに触っていないのに”刺される”

サカサクラゲの一種”Cassiopea xamachana”は、アメリカのフロリダ州やカリブ海、ミクロネシア周辺の浅い海に生息している。他のサカサクラゲと同様に刺胞毒は弱いが、奇妙なことにこのクラゲが生息する水域では、直接クラゲに触れていないにも関わらず、まるで刺されたようなヒリヒリとした症状が表れることがあったという。”stinging water”と呼ばれるこの謎の現象は、マングローブ林の流域でシュノーケルやサーフィンを楽しむ人々にとっては古くから知られていた。

従来まではサカサクラゲから分離された触手や、見えにくい小さな子どものクラゲによるものだとされてきたが、米海軍調査研究所の研究チームはサカサクラゲ属に関する文献を1900年代初頭にまでさかのぼって調べ、”stinging water”に関する手がかりを探した。その結果、サカサクラゲの一種が粘液と共に小さな細胞塊を分泌していることが明らかになった。

刺胞細胞のカプセル、カッシオソーム

”カッシオソーム(cassiosome)”と名付けられたこの細胞塊は、サカサクラゲが刺激を受けることによって無数に放出される。外層は数千個の刺胞細胞で覆われており、これに触れると刺されたときと同様に刺胞毒が発射されるという仕組みだ。さらに、カッシオソームには繊毛が備わっているため簡単な移動が可能であるという。

▼論文の特筆者、Anna Klompen氏がYoutubeにアップロードした動画。カッシオソームに触れたブラインシュリンプ(アルテミア)はたちまち動けなくなって死んでしまう。

▼容器内に大量のカッシオソームを入れ、そのなかにブラインシュリンプ(アルテミア)を入れる実験。アルテミアを入れる直前から、カッシオソームは繊毛により遊走していることが分かる。1分後、ほとんどのブラインシュリンプは動けなくなってしまった。

つまり、クラゲに触れてもいないにも関わらず、刺されたように皮膚がヒリヒリするのはサカサクラゲの一種が放出したカッシオソームが原因というわけだ。クラゲは、痺れて動けなくなった獲物を容易に捕食することができるだろう。

さらに研究チームは、サカサクラゲの一種(Cassiopea xamachana)の他に、4つの近縁種(Mastigias papua,Phyllorhiza punctata,Netrostoma setouchianum,Catostylus mosaicus)でもカッシオソームを放出することを確認している。

この研究成果は、イギリスの科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ・バイオロジー(Nature Communications Biology)』に掲載された。

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