2015年頃からネット上で、ある非常に奇妙な生物の写真が投稿されるようになりました。その名も「ガイコツパンダホヤ」。
名前にもある通り、パンダのような丸くかわいい顔のようなものがある一方で、白い線がまるで肋骨のように伸びており、奇妙な印象も受けます。
この生物はホヤの仲間で、「ガイコツパンダホヤ」と呼ばれていること以外、まったく分かっていないこともあり、その独特すぎる見た目から海外ではその存在を疑う人すらいます。
なぜガイコツパンダホヤと呼ばれるようになったのか?
なんとなくお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろんこのガイコツパンダホヤという名称は正式な和名ではありません。では、一体いつからこう呼ばれるようになったのでしょうか?
この名前が見つかる最古の記録は、ダイビングの情報サイト「Marine DivingWeb」の2013年4月19日の投稿で、沖縄県久米島でのダイビングにおいて投稿者がガイドから”パンダガイコツホヤ”を紹介してもらったとあります。
また、福岡県のダイブショップ「サンライズ」のマエダサチコさんによる2013年5月16日の投稿では、ダイビングショップ「ESTIVANT(エスティバン)」の田中さんという方から「ガイコツパンダホヤ」を教えてもらったという記事がありました。
この「田中さん」という人は当時、ESTIVANTに勤めていた田中 伸さんのことで、ESTIVANTのスタッフブログにおいて2017年9月に投稿されたガイコツパンダホヤという記事には、次にような説明があります。
改めてちょっと紹介させて頂くと、このホヤはまだ正式名称がついていないのですが、
数年前に私やけんたろうさんの先輩にあたる元スタッフが「ほや!?これは!?」となり(たぶん…(笑)
「ガイコツパンダホヤ」の愛称をつけて紹介しだしたのが始まりです。
つまり、どうやらこのガイコツパンダホヤという名称は沖縄県久米島のダイビングショップ「ESTIVANT」で田中 伸さんをはじめとするスタッフが考案し、2013年頃から観光客に紹介するようになり、のちに他のダイバー仲間や観光客のブログから大手掲示板やSNS、そして全世界へと広がったようです。
また、このガイコツパンダホヤという名前について、田中さんはこのように語っています。
こういう風な海の生物の紹介の仕方も「知ってもらう」ための大事な方法だと思っています
今回多くの人にこのホヤの存在を知ってもらえて、いちガイドとしてとても嬉しいです
また、田中 伸さんは2022年に投稿されたダイビングショップ「ARCH&STARS」の自己紹介でもこのガイコツパンダホヤを紹介しており、
自分で言うのは抵抗があるのですが、久米島時代にこのニックネームをつけて、世の中に送り出したのは実は僕なんです。ググってみたらこの画像が色んなサイトで使用されてるんですが、僕が撮影したものなんです。
とあり、自身が名付け親であることを明かしました。一度聞いたら忘れられない名前なので、このネーミングは大成功のようです。
このガイコツパンダホヤはすでに海外でも市民権を得ており、英語ではそのまま「Skeleton Panda Sea Squirt」と呼ばれています。
ガイコツパンダホヤの正式名称、学名は?
残念ながら、このホヤに関しての詳しい情報については明らかになっていませんが、ダービー大学の分子生態学の教授であるマイケル・スウィート(Michale Sweet)氏は、このガイコツパンダホヤについて、自身のツイートで「どの種であるかは不明であるもののPolycitor proliferusまたはClavelina moluccensisのいずれかである可能性がある」と指摘しています。
Introducing, the Skeleton Panda Sea Squirt (as it’s getting close to Halloween and they are simply cool) – unknown exactly which species this is but could be either Polycitor proliferus or Clavelina moluccensis. Any further suggestions for an ID? pic.twitter.com/abvj9T8Ktg
— Prof. Michael Sweet 🪸 (@DiseaseMatters) October 10, 2019
Kai Squires, CC BY 4.0 via Wikimedia Commons
こちらはツツボヤの一種であるClavelina moluccensisですが、確かに似ているかもしれません。一部のダイバーブログによると奄美の方では「青いガイコツパンダホヤ」もあるのだそう。
日本のホヤ研究者である長谷川 尚弘さんによると、日本には300種以上のホヤがいますが、沖縄方面での調査はほとんどされていないとのこと。
全国のダイバーへ! 求む!ホヤ写真! #拡散希望
日本国内には300種のホヤがいると言われていますが、まだ新種が見つかります!特に沖縄方面での調査はほとんどされていません!
ダイビングスポットで撮影したホヤ写真を共有してください!新種が写っているかも!#ホヤ #ダイビング #水中写真— 長谷川 尚弘 (@hoyahoy11532152) December 2, 2020
沖縄に生息するこのガイコツパンダホヤもなんらかの既知種の種内変異であるか、あるいは新種の可能性すらもあり、正確な分類については専門家による解剖や遺伝子解析を待たなければならないかもしれません。
このガイコツパンダホヤは、11月~4月の沖縄県久米島周辺の海で特にきれいな個体がみられるとのこと。今年のシーズンはそろそろ終わりですが、今後機会があれば、ぜひ潜ってみてはいかがでしょうか。
ガイコツパンダホヤが新種であることが明らかに
2024年2月1日 追記
北海道大学大学院理学研究院の研究によりガイコツパンダホヤが新種のホヤ(Clavelina ossipandae)であることが明らかになりました。詳細は北海道大学のプレスリリースをご覧ください。
ガイコツパンダホヤの正体が判明しました!https://t.co/riirJljyAh
久米島に分布して、そのかわいらしい見た目からガイコツパンダホヤと呼ばれていた群体性のホヤですが、実は新種でした!#ホヤ #ホヤ研究 #ダイビング #新種
— 長谷川 尚弘 (@hoyahoy11532152) February 1, 2024
ついにガイコツパンダホヤの正体が判明!~SNSによる情報拡散から新種の発見へ~ -北海道大学-
https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/02/sns.html