20年以上も存在だけが確認されていた謎の生物「ラピモナズ」の正体が明らかに――京都大学ら

筑波大学、京都大学、東北大学の研究者らはこのほど、約20年前に存在だけが確認されていた謎の生物の正体を突き止めることに成功しました。

どのような生物がどれくらい存在するのかは、直接生物を見つけなくても土や海水からDNAを抽出することで調べることができます。これを環境DNA解析といいます。

研究者らがさまざまな海水の環境DNA解析を進めていくなかで、1998年にこれまで知られているどの生物にも分類されない謎のDNAが発見されました。

「ラピモナズ(Rappemonads)」と名付けられたこのDNAの持ち主は、どうやら大西洋を中心に分布しており、ハプト藻やクリプト藻と呼ばれる藻類の仲間に近縁であることは分かっていましたが、20年以上もの間謎に包まれていました。

今回、京都大学をはじめとする研究チームは、大分県沿岸の海で採集された微生物のなかから2本のべん毛と角のような突起を持つ未知の藻類を発見。

その遺伝情報を調べると、謎の生物「ラピモナズ」のDNAに極めて近いことが分かりました。20年の時を経て、ついにラピモナズの正体が明らかになったのです。


current-biology ”Rappemonads are haptophyte phytoplankton”より

この藻類はハプト藻類の中の新たなグループに属することが判明したため、謎のDNAの発見者名にちなんでこの新規光合成生物はラピ藻(Rappephyceae)と名付けられました。

また、過去の環境DNA解析データを再解析した結果、大西洋だけでなく実は太平洋やインド洋にまで広く分布しており、海洋全体の光合成に大きく寄与していることが明らかになったといいます。

これまで発見されなかった理由について、京都大学の研究者は朝日新聞の取材に対し「細胞がもろいので海水を採取して観察するときには潰れてしまっていたのかもしれない」とコメントしています。

今回の発見は、光合成生物がどのようにして進化してきたのかを解明する手掛かりになるかもしれません。

Reference:Rappemonads are haptophyte phytoplankton
20年以上謎の生物、ついに正体が明かされる —光合成生物進化解明のカギに—

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