非常にカラフルで、ペットとしての人気もあるカエデチョウ科の鳥「コキンチョウ」。この鳥のヒナは一体どのような姿をしているのか、想像できるでしょうか。
実のところ、体の模様自体は緑がかった灰色で非常に地味なのですが、ヒナにはある「意外な特徴」があるのです。
下に埋め込まれているYoutube映像は、一部の人にとっては不快かもしれませんので、視聴の際はあまり無理はしないように。
▽コキンチョウのヒナ。閲覧・音量に注意。
黒板を引っ掻いたような鳴き声をあげながら口を大きく開き、頭を揺らすその姿は、まるでこの世のものとは思えない生き物のよう――
このヒナたちはただエサをねだっているだけですが、コキンチョウをはじめとするカエデチョウの仲間は口内に「奇妙な模様」があるため、このように異様な状態に見えるのです。
しかしながら、一体なぜこのような模様があるのでしょうか?
実は、まだはっきりしたことは分かっていませんが、一説によると「托卵(たくらん)」が関係している可能性があるといいます。
自分のヒナを見分けるため?
托卵とは、自分の卵を他の鳥の巣に産んでその親にヒナを育てさせる習性で、カッコウやホトトギスなどが行うことでよく知られています。
カエデチョウは托卵を「される」側の鳥で、テンニンチョウという鳥の仲間はそれぞれ、カエデチョウのある特定の種に対して托卵を行いますが、興味深いことにこのテンニンチョウのヒナにも、カエデチョウのヒナと同じ模様がみられるのです。
つまり、この口内の奇妙な模様は托卵されたときに、自分のヒナと他の鳥のヒナを識別するためのものである可能性があるのです。
しかし、不思議なことに一部のカエデチョウには、全く托卵されないにも関わらずこの模様を持っているものがいます。
もしかしたらこれは、かつて托卵されていた名残なのかもしれませんが、これでは説明を裏付けるような決定打にはなりません。
▽ふ化したばかりのヒナ。こちらも人によっては閲覧注意。
ヒナの健康状態を知るため?
他には、もともとカエデチョウがこの模様を持っていて、托卵するテンニンチョウがこの模様を真似して次第に似てきたのではないか、という説が新たに提唱されています。
これなら、托卵されない種類のカエデチョウにも模様があることに説明がつきますが、だとすればこの模様にはどんな機能があったのでしょうか?
実は、ヒナにみられるこの特徴的な模様は、健康なヒナほど明るく目立ち、成長するにつれて模様の間隔は開いて薄くなっていくことが知られています。
もしかしたら、この模様は親鳥がヒナの健康状態や成長段階を把握するためのものかもしれません。
また、模様の白い部分は光をよく反射するため、親鳥にとっての”ガイド”として役に立っている可能性があります。
実際に、コーネル大学がヒナの口の模様を黒く塗りつぶしてみたところ、塗っていないヒナよりも黒く塗りつぶしたヒナでは親鳥から貰ったエサの量は減っていました。
しかし、上記のいずれの説にせよ、まだまだ分かっていないことが多く、研究はこれからも続きそうです。
見れば見るほど、知れば知るほど奇妙な模様ですが、どんなに苦手な人でもずっと見続けていれば可愛らしく見えてきたり――することがあるかもしれません。
Reference:What’s Up With the Weird Mouths of These Finch Chicks?
騙しを見破るテクニック:卵の基準,雛の基準─托卵鳥・宿主の軍拡競争の果てに─