昭和天皇に献上されていた昆虫標本を発見、絶滅したチョウの標本も――国立科学博物館

このほど、1930年に昭和天皇に献上されたとされる昆虫標本688点が発見され、倉敷市立自然史博物館と国立科学博物館による調査チームが報告を行いました。

岡山県の記録によると1930年、生物学者としても知られる昭和天皇が岡山に訪れた際に、歓迎行事の一環として多数の昆虫及び植物標本が収集され、天覧に供されたといいます。


天覧に供されたという昆虫・植物標本。
国立科学博物館のプレスリリースより

この標本の大部分は、残念ながら1945年6月の岡山大空襲で収蔵されていた建物とともに焼失しましたが、記録によると昭和天皇に一部献上された標本があることが分かりました。

そこで、2019年に倉敷市立自然史博物館の学芸員が国立科学博物館の研究者に心当たりを問い合わせたところ、昭和天皇にゆかりのある標本資料を保管している昭和記念筑波研究資料館で、献上されたとされる昆虫標本を発見しました。


今回発見された標本。
国立科学博物館のプレスリリースより

この昆虫標本はチョウ・ガ類を中心に3目44科591種661点の同定標本と、27点の未同定標本の合計688点で、岡山県産の昆虫標本としては最も古いものであるといいます。

興味深いことに、この標本には岡山県内から記録されたことのない「マダラシロツマオレガ」や「オオワタノメイガ」などのガ類6種が含まれており、さらに岡山県内ではすでに絶滅した国内希少野生動植物種のチョウ「ヒョウモンモドキ」の標本が確認されたといいます。


岡山県では既に絶滅しているヒョウモンモドキ。
記載されている産地はこれまで知られていないものでした。
国立科学博物館のプレスリリースより

また、一部の標本には標本針のさびによる破損などがありましたが、虫害やカビなどはみられず、全体として非常に良好な状態にあったといいます。


標本箱の一つ。
国立科学博物館のプレスリリースより

この標本は倉敷市立自然史博物館にてポスター展示、国立科学博物館で一部がパネル展示されている予定であるといいます。

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