オスからの求愛を受け入れずメスに求愛するメスのメダカ、原因はたった一つの遺伝子変異――東京大学

東京大学の研究者らは、メダカの性指向や配偶行動に関わるメカニズムを解明することに成功しました。

どの動物でも多くの場合、パートナーは異性を選び、通常はオスが求愛を行い、メスから求愛することは稀です。

このような動物の性指向や配偶行動のパターンは多数の遺伝子が関わる複雑なメカニズムにより生み出されるため、その全体像はよく分かっていません。

ヒトにおいても近年、性指向に関わる遺伝子の大規模な探索が行われましたが、決定的な遺伝子はみつからず、多数の遺伝子が少しずつ関わるような複雑なメカニズムが想定されています。

東京大学大学院農学生命科学研究科の研究者らは、約6,000匹のメダカのなかからメスの配偶行動に関わるとされる「Esr2b遺伝子」に変異が生じているメスの個体を1匹見つけ出し、その変異を受け継いだ子孫の配偶行動を解析しました。

解析の結果、このメスはオスからの求愛を受け入れず、そしてあたかもオスのように他のメスに対して求愛行動(オス特有の求愛ダンスを踊る)をとることが明らかになりました。


変異が生じたメス(上)に求愛するオスのメダカ(下)。オスの求愛を受け入れず、見向きもしないようです。
東京大学のプレスリリースより

これらの配偶行動の変化は、驚くべきことにたった一つの遺伝子変異――それもEsr2B遺伝子のチミン塩基がグアニン塩基に置き換わっただけの、自然界でも偶発的に起こりうるような1塩基の置換変異のみで起きたといいます。

メスの個体でも、Esr2b遺伝子が発現していなければ行動はオス化してしまうことが分かりました。Esr2b遺伝子はどうやら、メダカにおける「脳の性別」を決定する因子であり、この遺伝子が脳領域で発現または消失することで性指向や配偶行動が切り替わるようです。

研究者らはさらに、体内の性ホルモン量を調整することにより、脳領域でのEsr2b遺伝子の発現が誘導・消失することを明らかにしました。男性ホルモンを投与したメスではEsr2b遺伝子の発現が消失して「オス化」し、女性ホルモンを投与したメスではEsr2b遺伝子の発現が誘導されて「メス化」したといいます。

魚類では一生の間に性転換する種類が多く、さらに自然には性転換を行わない種類の魚でもホルモンを投与することによって簡単に性別が変わりますが、どうやら、体内のホルモンバランスに応じて「脳の性別」が簡単に切り替わる仕組みであるようです。

Reference:Estrogen receptor 2b is the major determinant of sex-typical mating behavior and sexual preference in medaka