沖縄科学技術大学の研究者らはこのほど、トラップ型の大アゴを持つアリの系統樹を再構築し、どのように進化したかを明らかにしました。
アリの仲間には、「トラップ型」という特殊な機能を備えた大アゴを持つアリが存在します。
Trap Jaw Ant (Odontomachus rixosus) flickr photo by berniedup shared under a Creative Commons (BY-SA) license
通常のグリップ型のアゴを持つアリでは、アゴの開閉に筋肉を使いますが、このトラップ型のアリではアゴが開いた状態で固定され、このアゴを超高速で閉じて獲物を一瞬で捕らえることができます。
▽トラップ型のアゴを持つアギトアリの一種がアゴを閉じる様子。
Youtube 『These ants jump large distances … using their jaws not their legs』
▽アギトアリが瞬時に閉じるアゴを使って跳躍する様子。自然界では、アリジゴクなどから緊急回避する手段として役立っているようです。
Youtube 『These ants jump large distances … using their jaws not their legs』
しかし、祖先の単純な機構から、このような複雑な機構をどのようにして獲得したのかについてはこれまでよく分かっていませんでした。
そこで沖縄科学技術大学をはじめとする国際研究チームは、「トラップ型」の大アゴを持つ種が多く存在する世界中のウロコアリ属470種を対象にDNAを抽出し、進化上の関係を示す系統樹を再構築しました。
その結果、世界各地のウロコアリ属ではトラップ型の構造が独立して7~10回もの進化を遂げていたことを発見しました。
興味深いことに、形状のわずかな変化だけで大アゴの機能がグリップ型の機構からトラップ型の機構へと劇的に変化し、そして頭部で大規模な再構築が行われて大アゴの長さや開く幅が多様化していったといいます。
ウロコアリ属のアリでは、主要な獲物であるトビムシ類がばねの力を利用して逃げるのを阻止するため、超高速で閉じるアゴを使って素早く捕らえる必要がありました。
その速度は標準的なアゴの10万倍の速さで、人間のまばたきの数千倍の速さであるといいます。
研究者らは今後、世界中の代表的なウロコアリ属のゲノムを解読し、さらに遺伝子レベルでの変化を明らかにしていく方針です。