三重県と長野県でそれぞれ発見されたアルビノの白いタヌキは親戚同士であることが明らかに――京都大学

京都大学霊長類研究所の研究者らが、三重県と長野県という遠く離れた2か所で発見されたアルビノの「白いタヌキ」の遺伝子を解析した結果、共通の祖先を持つ親戚同士であることが明らかになりました。

アルビノは、メラニン色素の合成に関わる遺伝子の異常により体色が白くなった個体のことです。

メラニン色素は一連の化学反応により合成されますが、アルビノ個体ではこの最初の化学反応を担うチロシナーゼ酵素を作る遺伝子「チロシナーゼ遺伝子」に何らかの問題が生じ、酵素を生成できないかあるいは不活性となっています。

研究者らは今回、2014年に三重県の松坂で交通事故に遭い、大内山動物園で保護されたアルビノ個体「ポン」と、2017年1月に長野県飯田市で害獣防除の捕獲器により捕らえられ、飯田市立動物園で保護されたアルビノ個体「リュウ」についてそれぞれ遺伝子解析を行いました。


大内山動物園のポンちゃん。
A mutant gene for albino body color is widespread in natural populations of tanuki (Japanese raccoon dog)


飯田市立動物園のリュウくん。
A mutant gene for albino body color is widespread in natural populations of tanuki (Japanese raccoon dog)

その結果、松坂の「ポン」と飯田の「リュウ」はそれぞれ、チロシナーゼ遺伝子の同じ領域で欠如がみられ、共通の祖先を持つ親戚同士であることが明らかとなりました。原因遺伝子がどこで生じたのかは不明ですが、その遺伝子はタヌキたちに代々受け継がれながら長い時間をかけて拡散し、直線距離で約170kmも離れた飯田と松坂でそれぞれ発現したことになります。


京都大学のプレスリリースより

アルビノ個体では捕食者からみつかりやすい上に皮膚がんになりやすく、また視力も低下しているため生存には不利ですが、研究者によるとアルビノ個体やその原因遺伝子を潜在的にもつ個体は増加傾向にあり、タヌキの都市化への適応が進んでいるためではないかと推測しています。

ちなみに、リュウくんとポンちゃんは現在でも両動物園でそれぞれ元気に暮らしているとのことです。

▽今年3月9日に飯田市立動物園によって公開されたリュウくんの写真。

▽去年2月9日に大内山動物園によって公開されたポンちゃんの動画。

Reference:A mutant gene for albino body color is widespread in natural populations of tanuki (Japanese raccoon dog)

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