一部のウミウシは頭部だけを残して胴体部分を自ら切り捨て、再びからだ全体を再生させることを奈良女子大学の研究者らが発見しました。この研究成果は米科学誌『Current Biology』に3月9日付けで掲載されています。
体の大部分を再生できる例はプラナリアやゴカイなどが知られていますが、複雑な身体構造を持つ生物で確認されたのは初めてであるといいます。
Youtube 『Sea Slug’s Severed Head and Body』
今回、再生が確認されたのはコノハミドリガイとクロミドリガイという嚢舌目(のうぜつもく)のウミウシで、2018年に研究者らがコノハミドリガイの頭部と胴体が分離しているのを偶然発見し、観察を続けたところそのまま死ぬと思いきや頭部が餌を食べ続け、1週間以内に体の再生が始まり、三週間後には胴体が再生したといいます。
これらのウミウシは食べた海藻から葉緑体を取り込み(盗葉緑体)、光合成を行うことができるため頭部のみでもしばらくの間生存できるようです。ただし、年老いた個体では餌を食べずに死んでしまう例も確認されたといいます。
また、プラナリアのように切断された胴体部分から頭部は再生しませんでしたが、胴体部分だけでも最長で110日間生存することができたといいます。
ウミウシがこのように自切する詳しい理由についてはよく分かっていませんが、研究者らは敵から逃れるために切断するのではなく、おそらくは体に取り付いた寄生生物を排除するためのものと考えています。研究では、細い糸で軽く締めることによってウミウシの自切を誘導しました。
論文の共著者である大学院生 三藤 清香さんは時事通信社のインタビューに対し「他種でも見つかる可能性があり、自切の進化を調べたい」とコメントしています。
Reference:Extreme autotomy and whole-body regeneration in photosynthetic sea slugs
ウミウシ、頭から胴体再生 自ら切断後―寄生動物排除が目的か・奈良女子大