鹿児島大学総合研究博物館の研究者らは、保管中の標本からヒメジ科の新種魚類を発見し、研究成果がこのほど国際誌『Zootaxa』に掲載されました。
鹿児島大学総合研究博物館とノルウェー海洋研究所の研究者らは、西太平洋に分布するヒメジ科ヒメジ属魚類の分類学的研究を実施し、ベトナムやインドネシアなどから3新種を発見しましたが、そのうち1種はなんと総合研究博物館で保管中の標本から発見されたものであるといいます。
この標本は2012年1月に種子島で設置された定置網によって採集されたもので、体長は9cmほど。
サクヤヒメジという種類によく似ていますが、この新種は体がより細長く、第1背ビレ基部中央に黄色斑があり、異物をろ過する鰓耙(さいは)の本数が多いといった特徴があります。
近縁種であるサクヤヒメジの名前は、日本神話に登場する女神、「木花之佐久夜毘売(このはなさくやびめ)」に由来することから、研究者らは今回発見された新種を「このはなさくやびめ」の姉にあたる女神「石長比売(いわながひめ)」からとってイワナガヒメジと名付けました。
ちなみに、学名は「細長い」を意味するラテン語に基づいてUpeneus elongatusと記載されたといいます。
このイワナガヒメジのおもな生息地はフィリピン近海のようで、種子島で採集された個体はどうやら黒潮によって運ばれてきたようです。
鹿児島大学総合研究博物館が発見・記載したヒメジ科魚類は今回の発見で5種目となります。20万点にも及ぶ総合博物館の魚類コレクションのなかには、まだまだ未知の魚の標本が保管されているものと考えられており、研究者らは膨大な標本を利用・活用したさらなる研究を行っていく方針です。
Reference:【総合研究博物館】保管中の標本から新種のヒメジを発見、「イワナガヒメジ」と命名
Three new goatfishes of the genus Upeneus from the Eastern Indian Ocean and Western Pacific, with an updated taxonomic account for U. itoui(Mullidae: japonicus-species group)