京都大学の研究者らは、チンパンジーが外部からの脅威に対して仲間同士で結束を強めることを国際学術雑誌『PLOS ONE』で報告しました。
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人間はなんらかの脅威に直面すると、集団としてのまとまりを強化して協力関係が高まりますが、その進化的起源はよく分かっていません。
そこで京都大学の研究者らは飼育チンパンジーの集団を対象に、知らない個体の音声を聞かせて外部からの脅威に対する反応を調べました。
野生下では、チンパンジーの集団は互いに敵対関係であり、異なる集団に遭遇すると時には殺し合いにも発展することがあります。チンパンジーたちにとって知らない個体の声が聞こえるということは、外敵となる集団、すなわち「脅威」が迫っていることを意味します。
今回、研究者らは京都大学熊本サンクチュアリの5つのチンパンジーの集団、合計29個体を対象に、面識のないチンパンジーの声を聞かせました。
その結果、チンパンジーたちは寝転んで休息する時間が減少したり、自分の身体をひっかくなどのストレス行動が増加しましたが、一方で個体間の距離が縮まり、遊びやグルーミングといった親和的行動が増え、食べ物をめぐる争いなどが減少しました。
どうやらチンパンジーは外部からの脅威に直面するとヒト同様に集団内の結束を強めるようです。
京都大学熊本サンクチュアリのチンパンジーの様子。知らない個体の音声を聞くと個体間近接度や親和行動が増加しました。
京都大学のプレスリリースより
この性質は他の動物でもみられるのでしょうか。チンパンジーは異なる集団同士では殺し合いにさえ発展しますが、例えばボノボの場合は非常に平和的で、異なる集団間であっても仲良くグルーミングしあう様子も野生では観察されています。
研究チームはさらにチンパンジーとボノボという近縁2種の比較を通して、集団間競争と集団内協力の進化について明らかにしていく方針です。