嫌な動画を毎日10分見続けたマウスは抑うつ症状が現れる、国立精神・神経医療研究センター

国立精神・神経医療センターの研究者らは、「マウスが攻撃されている映像」を見たマウスはストレス反応を示し、毎日繰り返し見せると意欲の低下や報酬感受性の低下といった抑うつ症状を引き起こすことを明らかにしました。

研究者らは、モニターとスピーカーで挟まれた透明のケージのなかにマウスを入れ、一方には「マウスが他のマウスに攻撃されている映像」を10分間流し、もう一方には対照群として「マウス同士がただ接触しているだけの映像」を10分間流して、それぞれのマウスのストレス反応を調べました。


国立精神・神経医療センターのトピックスより

その結果、「マウスが攻撃されている映像」を見たマウスでは前帯状皮質や扁桃体、腹側被蓋野など、直接攻撃を受けたときと共通する脳の部位が活性化しており、さらに対照群と比較してストレスの指標となる血中のコルチコステロン値が上昇していました。

「マウスが攻撃されている映像」を見たマウスは、どうやら直接攻撃を受けたときと同様にストレスを受けているようです。

また、モニターを遮って音声だけを聴かせた場合や、マウスが攻撃される映像をモザイク加工して不明瞭にした場合ではこのコルチコステロン値が上昇しなかったことから、やはりマウスは映像の内容を理解したうえでストレスを感じているようです。

さらに、この実験を毎日10分間、10日間に渡って行ったところ、他のマウスが攻撃される映像を見続けたマウスでは、砂糖水への嗜好性が対照群と比べて有意に低下していました。

これは意欲の低下や報酬に対する感受性の低下を示しており、すなわち「やる気が湧かない」、「楽しいはずのものが楽しくない」、「何をしても面白くない」といった抑うつ症状が現れているようです。

気になっても嫌なものは見ないでおこう

近年、Youtubeで大量にアップロードされる動画をチェックし、暴力や虐待といった過激な映像を取り締まるコンテンツモデレーターの健康被害が問題とされているように、ヒトでも今回の研究と同じことが起きていると考えられます。

現代ではSNSなどを通じて日々、さまざまな情報が発信されており、そのなかには過激なものも含まれていますが、たとえ気になっても内容を見ないよう努力するだけで、知らず知らずのうちに消耗していた心の落ち着きを少しでも取り戻せるかもしれません。

この研究成果はイギリスの科学誌『Scientific Reports』に掲載されています。

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