アフリカゾウはマサイ族の男だけに反応して逃げる、イギリスの研究

ゾウは高い知能と複雑な感情を持つことで知られています。たとえば、群れの仲間が死んだときには、まるで”葬式”のように仲間の死骸に集まり、鼻で撫でるような行動が報告されています。

アフリカのケニアで、しばしば発生する”ゾウによる殺人”も、そうした複雑な感情がもたらした悲劇なのかもしれません。
ゾウによって家族を殺されたマサイ族の人々は、報復として最初に見つけたゾウを殺します。仲間を殺されたゾウは怒り、悲しみ、そして再び人間へと牙を向けます。

アフリカゾウにとってマサイ族は脅威

主食が牛乳であるマサイ族は、牛を放牧しながら移動して暮らしているため、水場や放牧地をめぐってしばしばアフリカゾウと対立します。マサイ族にとってアフリカゾウは狩猟対象であり、アフリカゾウには危険な存在です。


Masai from Mara, Kenya flickr photo by Ninara shared under a Creative Commons (BY) license

2014年の研究で、ある驚くべきことが明らかになりました。なんと、アフリカゾウはマサイ族をしっかりと識別して警戒しているようです。

アフリカゾウは、マサイ族がよく着ている赤い伝統衣装を見ると攻撃的な反応を示し、さらにマサイ族の男の匂いを嗅ぎ取ると即座に逃げ出す様子がみられました。一方で、アフリカゾウを狩猟しないカンバ族の匂いや、女性の匂いを嗅がせても、アフリカゾウはあまり反応しませんでした。

イギリス・サセックス大学の行動生態学者らは、さらに詳しく調べるために、マサイ族とカンバ族の声を録音し、47のゾウの家族に2年以上にわたって142回、ゾウからは分からないように音声を聞かせました。

その結果、マサイ族の成人男性の声を聞いた場合では、群れを率いるリーダーは即座に逃げ出しましたが、カンバ族の男性の声や、女性・子どもの声では大きな反応を示さなかったといいます。


In memory of one of the rare Elephant Twins, who died this week. Amboseli National Park flickr photo by Ray in Manila shared under a Creative Commons (BY) license

女性や小さな子どもは狩猟に参加することはないので、ゾウにとって警戒すべき声でないことは明らかですが、聞こえてきた声がたとえ成人男性のものであったとしても、アフリカゾウは攻撃される恐れのあるマサイ族か、他の民族かをしっかり聞き分けて行動していたのです。

マサイ族と出会ったら逃げろ――繰り返される悲劇のなかで、アフリカゾウは”危険な民族”の存在を理解し、身を守るための最善の行動を取っていたようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。