オーストラリア・クイーンズランド大学の研究者らは、ギンピ・ギンピと呼ばれる植物から、まるでクモやサソリが持つ毒に似た毒素を新たに発見しました。
現地の言葉でギンピ・ギンピと呼ばれるイラノキ属のデンドロクニド・モロイデス(学名:Dendrocnide moroides)は、オーストラリアのクイーンズランド州北東部の熱帯雨林に自生する植物で、大抵は0.1~1mほどの軟らかい低木です。
この植物の葉や茎、果実には細やかな毛が生えています。見た目はふわふわしてそうで、つい触ってみたくなりそうですが、この毛は針状の構造を持つ「刺毛」と呼ばれるもので、これが皮膚に触れると皮下注射のように神経毒が注入され、ほんの一瞬触れただけでも強烈な痛みをもたらし、数日から数週間も続きます。
論文の特筆者はこの痛みについて、「ギンピ・ギンピに触れると最初は焼けるような激痛が走り、その後は数時間かけて痛みは弱まるが、それでもまるで勢いよく閉めたドアに手を挟まれたような痛みが残る」と説明しています。
Rainer Wunderlich / CC BY-SA
ギンピ・ギンピの葉は、ハート型または楕円形をしています。
あまりの痛みに自殺者が出たという話も
この植物の有名なエピソードに、ある男性の話が知られています。男性が外で用を足したあと、トイレットペーパーの代わりとしてこのギンピ・ギンピを使った結果、その強烈な痛みに耐えかねて銃で自殺を図ったというのです。詳しいことは不明ですが、この植物を知る者なら誰もが信じて疑わないでしょう。
ギンピ・ギンピから新たな毒素を発見
有効な治療法が確立されておらず、地元のハイカーから恐れられているこのギンピ・ギンピの毒は、類似の植物にみられるようなヒスタミンやアセチルコリン、ギ酸などではないことが分かっており、これまで毒の詳しい成分は不明でした。しかし、オーストラリア・クイーンズランド大学の研究チームは、ギンピ・ギンピから新しい神経毒ミニタンパク質を発見することに成功し、この毒素を「ギンピチド(gympietides)」と名付けました。
このギンピチドは植物由来のものですが、タンパク質における3次元分子構造の折り畳まれ方がクモの毒やイモガイの毒に類似しており、同じように疼痛受容体を標的に作用しているそうです。
また、研究チームはギンピ・ギンピによる痛みが長引く理由について、刺毛が皮膚に入り込んで取れなくなるからではなく、ギンピ・ギンピの毒素「ギンピチド」が感覚ニューロンの化学組成を永続的に変化させたことによるものと指摘しています。
毒素の詳細が分かれば、効果的な治療法や、痛みを和らげる方法などを発見できるかもしれません。
・興味深いことに、触っても痛みのない個体も発見されています。
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