動物は人間の近くに移動して身を守ろうとするが、逆に死亡率は高くなることが明らかに

中間捕食者の動物たちは大型の捕食者から身を守るため、安全を求めて人間の生活エリアに移動する傾向がありますが、それにより逆に死亡率が高くなっていることをワシントン大学の研究者らが明らかにしました。

この研究成果は、5月18日付けで『Science』に掲載されています。

人間の盾効果(ヒューマンシールド効果)

コヨーテやボブキャットなどの中間に位置する中型肉食動物は、同じ地域に生息する、自分たちより強く大きな肉食動物であるオオカミやクーガーに捕食されないために、しばしば人間の生活圏に近い場所へと移動する傾向があることが知られています。これを、人間の盾効果(human shield effect)といいます。

この人間の盾効果は、他にも人間社会に溶け込み、人に慣れた動物たちが、人間が近くにいると捕食者の存在をあまり警戒しなくなる現象を指すこともあります。

これは動物たちが大型肉食動物と比べて人間がそれほど脅威でないと評価していると同時に、「人間が近くにいるなら大型捕食者も近くにいないだろう」という判断が行われていることを示したものです。

確かに人間の生活エリア内では、食べ物になる農作物や廃棄物なども多いため、生存率が高まる可能性がある一方、狩猟対象となったり、捕まって駆除されたり、自動車などにひかれる可能性もあるなどのリスクもあるため、この判断が正しいかどうかはわかっていません。

人間の盾効果
City Coyote flickr photo by Wildreturn shared under a Creative Commons (BY) license

ワシントン大学の研究者らは、ワシントン州北部の一体で生態系の中間に位置するコヨーテやボブキャット、そして生態系の頂点により近い大型肉食動物のオオカミやクーガーにそれぞれ発信機付きの首輪を装着し、人間の盾効果や、実際の成果を調査しました。

研究者らが収集したデータを解析した結果、小さい捕食者はやはり大きい捕食者から離れて、人間の影響が大きい場所に移動する傾向にありましたが、全体的な生存率は、大型肉食動物に襲われるよりも人間に起因する死亡率の方が3倍以上も高いことがわかりました。

この研究成果は、私たちの生態系において人間の影響がどのように複雑に作用しているのかを示す一例として、動物保護や自然との共存を実現するための取り組みに役立つことが期待されます。

Reference
Fear of large carnivores amplifies human-caused mortality for mesopredators -SCIENCE-
Human shield: Some animals use people to ward off larger predators, study finds -THE JERUSALEM POST-
Know the Jargon: “Human Shield Effect” -SCIENTIFIC AMERICAN-

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