長らくロンドン自然史博物館に収蔵されていた瑪瑙(メノウ)の鉱物標本が、実は恐竜の卵の化石であったことが判明したと、このほどロンドン自然史博物館が発表しました。
この標本は今から175年前以上前にインドで発見されたもので、140年前の1883年にロンドン自然史博物館の鉱物コレクションに登録されたもの。
The first known dinosaur egg? A new discovery from the Museum’s collection -NATURAL HISTORY MUSEUM-
標本の直径は約15cmほどで、淡いピンク色や白色などの細やかできれいな縞模様が観察できますが、これまでその美しさ以外には特に重要な標本だとは認識されておらず、長らくコレクションとして収蔵されていました。
卵の化石だと分かったのは偶然の発見
きっかけは2018年、ロンドン自然史博物館が会員制のレストランルームに展示するものとしてこの標本が選ばれ、鉱物学の学芸員であるロビン・ハンセンさんはその標本を展示する手伝いました。
その数か月後、フランスで開催された鉱物展示会でロビンさんがメノウ化した恐竜の卵を見せてもらったとき、それがレストランルームに展示したものによく似ていることに気付いたのです。
ロビンさんはすぐにロンドン自然史博物館にいる恐竜研究者にその標本を持ち込むと、瑪瑙の周りに薄い殻のようなものが確認でき、研究者たちは卵のサイズや形状、表面の特徴や採掘地からティタノサウルスの卵の化石であると結論付けました。
この標本には、隣に他の卵があったような痕跡も確認できます。
The first known dinosaur egg? A new discovery from the Museum’s collection -NATURAL HISTORY MUSEUM-
この標本について詳しく調べると、1817年から1843年の間にインドに住んでいたチャールズ・フレイザーという人物によって発見されていたことがわかりました。
つまり、面白いことにこの卵の化石は世界で初めて恐竜の卵が発見される1923年よりもさらに100年も前、そもそも恐竜という概念が生まれる前から発見されていたことになります。
専門家らは、この卵の化石がメノウ化した理由について、ティタノサウルスの母親が卵のふ化のために温かい火山性土壌を選んで卵を産んだが、それが火山活動によって埋もれ、やがて卵の周囲に玄武岩が形成されて中身が腐食し、空洞化した内部にケイ酸塩鉱物を豊富に含んだ水が繰り返し浸透した結果、このような美しいメノウが形成されたとみています。
美しいメノウというだけでも十分な価値を持つこの標本でしたが、ちょっとしたひらめきと運で、鉱物学的にも考古学的にも重要な標本のひとつとなりました。
Reference
What Researchers Long Thought Was Just an Agate Crystal Is Actually a Dinosaur Egg Fossil
The first known dinosaur egg? A new discovery from the Museum’s collection