60年以上も謎に包まれていたフクラガエルの粘液を採取し、調べることに成功――長浜バイオ大学

このほど、広島大学と長浜バイオ大学の研究者らは、これまで60年以上も謎であったフクラガエルの粘液を採取することに成功し、その機能の一端を解明しました。

アフリカの乾燥地域に生息しているフクラガエル類は、まるで風船のようなまんまるとした姿をしており、ある種のフクラガエルは非常に可愛らしい鳴き声を出すことで知られています。

▽ナカマフクラガエルの鳴き声。ナショナルジオグラフィックTVより

実は、このフクラガエル類はオスとメスの体格差が大きいため、繁殖行動の際には一般的なカエルのようにオスが後ろからメスを抱きかかえるようなことができず、かわりに体表から特殊な粘液を分泌して接着することでつがいを作ります。


広島大学のプレスリリースより

エピネシス・コラムズ
カエルの交尾姿勢には、これまでに7つの体位があることが知られています。

この粘液の存在は60年以上前から知られていましたが、人工的に分泌させることができなかったため、これまでこの粘液がどのような性質を持っているのか分かっていませんでした。

しかし広島大学と長浜バイオ大学の研究者らは、アメフクラガエルの皮膚に電気刺激を与えることでカエルの体表から粘液が分泌されることを発見。これにより、長い間明らかになっていなかったこの粘液を調べることが可能になったといいます。


広島大学のプレスリリースより

粘液の接着力はマジックテープ並み

研究者らがこの粘液について調べた結果、どうやらこの粘液は時間経過とともに接着力が強くなるようで、およそ1時間から3時間おいたときに最も強くなりました。

1時間置いた時の接着力を引っ張り試験機を使って調べた結果、その接着力はマジックテープ(面ファスナー)並みであったといいます。

しかし、その後は接着力が次第に弱まっていき、3日後には接着力がなくなりました。この接着力はどうやら粘液中の水分量に関係しており、自然乾燥で水分が失われたために接着力が弱まったと考えられます。

「浮気の現場」から新事実が発覚

また、繁殖行動の際にオスとメスのどちらかが粘液を出すのかについては40年ほど前から議論が続いていました。

これまで、粘液はオスとメスが違う種類の粘液を分泌し、それらが混ざり合うことで強い接着力が生じるという「エポキシ仮説」が有力でした。しかし今回の研究でオス・メスそれぞれが出す粘液に接着時間・接着力の違いが無いことが明らかになりました。

このことは、研究者らが現地調査で偶然にもフクラガエルのオスが他の種類のカエル(スナガエル)に”浮気”している現場をおさえたことからも明らかになっており、この偶然の発見によりオスとメスの粘液が混ざり合う必要がないばかりか、むしろオスが分泌する粘液だけでも接着できることが分かりました。


広島大学のプレスリリースより

論文を特筆者である倉林 敦准教授は、調査の過程で「瞬間接着剤顔負けの超強力な糊(のり)を出すフクラガエルを発見しています。」とコメントしており、それぞれのフクラガエルにおける粘液の違いや、まだ明らかになっていない粘液の化学物質、および関連する遺伝子について研究していく方針です。

Resource:【研究成果】夫婦の絆はどれだけ強い?フクラガエル糊の謎を解く – 広島大学

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