測定装置を取り付けるのが難しいタコ、世界で初めて脳波を測定することに成功

沖縄科学技術大学院大学の研究者らは、覚醒した状態のタコの脳波を測定することに世界で初めて成功しました。この論文は2月23日付で学術誌『Current Biology』に掲載されています。

タコは非常に高い知能を持つ

タコは非常に高い知能を持つことで知られています。それもそのはずで、神経細胞の数は5億個以上存在すると言われており、神経細胞の数だけではなんと犬にも匹敵するほど。

興味深いことに、タコの脳に存在する神経細胞は全体の1/3ほどで、残りの2/3もの神経細胞は腕や胴に分布しています。

このような発達した特殊な神経系を持っていることから、タコは触手を使った複雑な協調動作を行うことができ、たとえビンに閉じ込められても高い状況把握能力と学習能力でいとも簡単に脱出することができます。

▽フタを閉めたビンから脱出するマダコ。新江ノ島水族館公式チャンネルより

タコには9つの脳がある?

また、タコの腕は捕食者の注意をそらすために切り離されることがあり、切り離された腕は神経系の働きによって長い時間動き続けます。

「タコには9つの脳がある」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは中枢にある脳と、8本の腕にそれぞれ1つずつ脳があり、あわせて9つ脳があると考えられてきたためで、タコの腕にはそれぞれ独立した脳を持っているという説がありました。

この説は神経の分布からみるとあながち間違いではありませんが、2018年に同大学の研究により否定されました。論文の特筆者であるタマー・グッドニック氏によると、「正確には1つの脳と、8本の非常に賢い腕を持っている」とのこと。

賢いあまりに記録装置を外してしまう

前回までの研究により中枢にある脳が重要であることはわかりましたが、タコの脳活動を記録するのは決して簡単ではありません。

タコは非常に柔軟な体を持っており、頭蓋骨などを持たないため記録装置が外れないように固定することが技術的に難しく、さらに柔軟性のある腕と高い知能を使って、どう工夫して付けても腕が届いて外されてしまったといいます。

そこで研究者らは鳥類用に設計された小型で軽量の記録装置(データロガー)に注目。これをさらに小型化し防水加工を行うことで外套膜の筋肉壁にある空洞部分に収まるように設計し直しました。

タコの脳波を記録することに成功

研究チームは3匹のワモンダコに麻酔をかけ、記録装置を装着させると、タコは5分後に回復して活動を開始。

その後の行動はすべてビデオで撮影し、記録限界時間である12時間後に記録装置を回収。タコの睡眠や食事、水槽内の移動などの行動と脳の活動パターンを紐づけて確認しました。

その結果、タコには数種類の脳活動パターンがあり、哺乳類とよく似た波形もあれば、なかにはこれまで報告されていないような非常に長くゆっくりと続く独特のパターンもあったとのこと。

▽タコの睡眠中の様子。左下には記録された脳波が表示されています。

今回の実験で電極を埋め込んだ脳の部分は視覚学習や記憶などを司る領域で、研究者らは今後、タコに特定の課題を与えてどのように学習していくのかを明らかにしたいと語っています。

Reference
動き回るタコの脳波を記録することに世界で初めて成功 -OIST-
タコの腕には脳がある? -OIST-
Recording Electrical Activity from the Brain of Behaving Octopus -Poered by SSRN-

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