ハダカデバネズミは生涯にわたって繁殖できることが判明

30年以上もの長寿で血管機能がいつまでも若い、低酸素でも長時間活動でき、無酸素でも18分以上も生きられる、野生でがんになった個体が発見されていない、がんにさせようとしてもがんにならない――

ハダカデバネズミについてはこれまでにも驚くべき性質が次々と報告されてきましたが、今回新たな研究によってハダカデバネズミは「生涯にわたって繁殖できる」ことが明らかになりました。

作ることのできる卵子の数は有限、生まれる前から減り続ける

基本的には私たち人間やマウスなど、ほとんどの哺乳類は胎児の時からすでに卵子になりうる生殖細胞は作りきっており(卵形成)、生まれる前から自然消滅によって減少し続けていきます。

これに加え、老化が進むにしたがって健全な卵子の割合が減少するため、通常は加齢によって生殖能力は低下してしまうのが一般的です。

しかしハダカデバネズミのメスでは生涯にわたって繁殖能力を維持し続け、さらに健全な卵子の割合が減ることはありません。

これまでの研究により、ハダカデバネズミは老化そのものに対する耐性があることが知られてはいましたが、一体どのようにして生涯にわたり生殖能力を維持し続けるのか、ピッツバーグ大学の研究チームは検証を行いました。


A Face Only a Naked Mole Rat Queen Could Love… flickr photo by John Brighenti shared under a Creative Commons (BY) license

ハダカデバネズミの卵子は増え続けることが判明

研究チームは6匹のハダカデバネズミが生まれてから90日経過するまでの卵巣を観察し、マウスと比較しました。

研究者らが、やがて卵子になる生殖細胞を蛍光マーカーなどを使って細胞分裂を追跡すると、興味深いことにハダカデバネズミでは生まれた後からでも卵子になりうる生殖細胞は増え続けていき、生後8日目には平均して150万個、同じ日数のマウスの細胞数の95倍も保有していることが明らかになりました。

どうやらハダカデバネズミは、本来は減り続ける一方であるはずの生殖細胞を新しく作ることができるうえ、さらに大量に保有することによって年老いてからも生殖能力を維持し続けることができるようです。

繁殖できるのは女王のみ

ただし、今回の研究において注意しなければならないのは、メスのうち繁殖できるのはコロニーの女王のみということです。

ハダカデバネズミは大規模なコロニーを形成して生活していますが、繁殖できるのはコロニーにいる1匹の女王のみで、他のメスは生涯にわたって繁殖能力は維持し続けるものの、女王がいる限り他のメス個体の繁殖能力は抑制されており、女王がいる限り繁殖することはありません。

ハダカデバネズミたちのメス個体はいつでも繁殖能力が衰えない、すなわちいつでも女王になる準備が整っていると言えるわけですが、まだどのように健全な生殖細胞を保っているかどうかについてのメカニズムは不明であるため、さらなる研究が待たれるところです。

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