入れ墨(タトゥー)をしている人はMRI検査を受けられないのか?

入れ墨(タトゥー)をしている人はMRI検査を受けられないという話を聞いたことがあるかもしれません。

そもそも、MRIは「Magnetic Resonance Imaging」の略称で、核磁気共鳴画像法のことです。

強力な磁場のなかで人体に電磁波を照射し、「核磁気共鳴」により発生した信号を解析して体内の水素の分布・状態などを画像化する技術で、CTなどのような放射線を使うことなく、人体の断面画像などをみることができます。

MRIでは超強力な磁場が発生する

基本的には人体にほぼ無害といわれるMRIですが、まったく危険がないわけではありません。

MRIでは超電導磁石と呼ばれる特殊な電磁石を使い、強力な磁場を発生させているため、ごく小さな磁性体でも強く引き付けてしまいます。もしスパナやドライバーなどを近づけると…

このように、トンネル内部に向かって磁性体が強く引き付けられてしまいます。

さて、「アートメイクや入れ墨(タトゥー)をしていてもMRI検査は受けられるのか」という疑問ですが、答えは「基本的には受けられるが、受けられない場合もある」です。

入れ墨(タトゥー)やアートメイクは、針などを使って皮膚に色素を注入することで着色するものですが、この色素には酸化鉄やコバルトなどの磁性体微粒子を含んでいることがあり、そこに強い磁場がかかるとまれに熱感やチリチリとした痛みなどが生じる場合があります。

また、実際に海外では火傷などが発生した例も報告されています。

MRIによる火傷の痕

そのため、日本磁気共鳴医学会と日本医学放射線学会が定めた「臨床MRI安全運用のための指針」には、必ず入れ墨などの問診を検査前に必ず行い、適切に管理するよう取り決められています。

タトゥーなどが入っている場合はどのようにMRI検査を受けるのか?

問題なのは入れ墨(タトゥー)が人体にあることを確認したあと、どのような判断が行われるかについてですが、それは医療機関または医師の判断となり、場合によってはMRI検査が受けられないこともあります。

MRIの検査を行う前の同意書は一部の医療機関ではオンラインで公開されているものもあるので、実際の内容をみてみましょう。

>>独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター MRI検査同意書

最近のアートメイクや刺青の色素には、「鉄」などの磁性体を含まないものも多く、その場合はMRI検査を行うことができます。
https://nagoya.hosp.go.jp/wp-content/uploads/2020_yo3-1_douisyo.pdf

>>長野県 伊那中央病院 刺青のある方へのMRI検査同意書

MRI検査は高い磁場のもとで検査を行います。そのため高磁場により入れ墨の変色や、発熱し火傷を起こす症例が報告されています。その発生度はかなり低く、ほとんどの場合は問題ありませんが、入れ墨のある方で診断上必要と思われる場合にMRI検査を行うことにしています。
https://www.hospital.nagano.nagano.jp/common/img/regional/medical_personnel/mri_ic_tattoo.pdf

>>公立那賀病院 MRI検査(体内金属及び刺青)承諾書

・刺青をいれている患者様は、原則撮影は出来ません。
・刺青の色素成分には金属が含まれている場合があり、その金属成分が MRI の強磁場 の影響でまれに発熱または、変色をおこす場合があります。
・金属成分が発熱すると、低温火傷をひきおこします。また色素成分により刺青がはいった部位が黒ずんだり、変色する可能性があります。
https://www.nagahp.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/a8f8a49590d1613db6ddb16d232b83f2.pdf

医療法人さくら さくら記念病院 MRI検査同意書

MRIは非常に強い磁石と電波を利用した検査です。手術などで体内に金属があると磁石、電波に反応して不慮の事故が起こる可能性があります。

検査不可
・撮影範囲に刺青、タトゥー、アートメイク等の色素を皮膚に入れている方

刺青等があり検査をする場合、必要性とリスクの説明をして右にチェックしてください。
http://www.sakurakinen.jp/ctmri/img/mridouisyo.pdf

国家公務員共済組合連合会 吉島病院 MRI検査説明書

入れ墨やタトゥーがある場合、MRI検査中に熱を生じる可能性がございます。
検査中に違和感を感じる場合は中止させていただきます。あらかじめご了承ください。
https://yoshijima-hosp.kkr.or.jp/renkei/files/mri.pdf

多くの医療機関ではリスクなどを事前に説明するか、あるいは検査は不可であることを前提としたうえで、患者自身が免責事項に同意することでMRI検査を受けることができるようです。

近年の入れ墨などに使われている色素には金属アレルギーなどを考慮して金属を含まないものも多く、何らかの問題が起きるリスクについても、日本では火傷はもとより熱感などの報告すら稀ですが、明らかに問題が起きることが予測される場合には検査が受けられないこともあります。

また、健康上の問題は起きなくともMRIで患部をうまく撮影できなかったり、入れ墨(タトゥー)が変色・変形してしまうこともあるので、検査前にはしっかり担当医と相談しておきましょう。

Resource
Wagle WA, Smith M. Tattoo-induced skin burn during MRimaging. AJR Am J Roentgenol, 2000; 174(6): 1795.
Do MRI Machines Affect Tattoos? -LIVE SCIENCE-

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