蚊が暗闇でも障害物を避けて飛ぶことができる理由が解明される

夏の時期、寝ているときにやってくる蚊は悩みの種だ。真っ暗な部屋で、耳元にあの不愉快な羽音が聞こえたら退治せずにはいられない、という人も少なくないだろう。

蚊は二酸化炭素、あるいは特定の匂いをよく検知できるため、暗闇でも動物がいるだいたいの場所を特定することができる一方、実は視力はあまりよくない。しかし、大抵は暗闇でも障害物をうまく避けることができるのだ。その理由についてはこれまでよく分かっていなかった。

千葉大学大学院、英王立獣医大学、ブライトン大学、リーズ大学らの国際研究チームは、蚊の触覚の根元に備わっているジョンストン器官と呼ばれる特殊な器官に注目した。この器官は11nm、あるいは10-7m/sの空気の振動によって生じるわずか0.005°の触覚のふれにも反応できるという報告がなされており、空気のわずかな流れを感知することができる、いわば超高感度センサーである。

Retreat?
Retreat? flickr photo by benjaflynn shared under a Creative Commons (BY) license

千葉大学大学院の研究チームらは、蚊は自らの羽ばたきによって引き起された気流のひずみを検知しているのではないかという仮説を立てた。いわば、暗闇を飛ぶコウモリが超音波の反射を使って周囲を認識する「エコーロケーション」ように、蚊も羽ばたきによって気流を作り出し、そのひずみを検知して壁や床を認識しているのではないかと考えたのだ。

研究チームらは先行研究のデータを利用して、数値計算で蚊の羽ばたきによって生じる気流を再現し、それが壁や床の存在によってどのように変動し、蚊の触覚に影響を与えているかを調べた。その結果、蚊はわずか4mmほどの体長でありながら、その10倍近い距離である約30~40mm離れた場所の気流の変動を感知して、障害物を検出できることが明らかになったという。

蚊の羽ばたきによって生じた地面付近の気流
蚊の羽ばたきによって生じた地面付近の気流。赤色ほど気流の変動が大きく、青色になるほど小さいことを示している。千葉大学のプレスリリースより。

蚊は、産卵する際に水面から20~70mm離れた所から水中へ卵を産み落とすことが知られていたが、今回のシミュレーション結果はそれによく一致するものであった。また、国際研究チームの研究者らはドローンを使ってこの機能を再現し、蚊と同様にプロペラが起こす気流の変動によって壁や床を検知できることを実証したという。

今回の研究は、蚊を寄せ付けない新しい手法の開発につながるだけでなく、バイオミメティクスとしての応用も期待できそうだ。この研究成果は科学誌『Science』に、2020年5月8日付けで掲載されている。