メドゥーサウイルスの分類を「マモノウイルス」にすることを発表――東京理科大学

京都大学をはじめとする合同研究チームはこのほど、2019年に発見されたメドゥーサウイルスの分類について、「マモノ(魔物)ウイルス科」を新設することを提案しました。

今回の発表は国際微生物学連合ウイルス部会の公式ジャーナル『Archives Virology』にオンライン掲載されています。

巨大ウイルス

2003年にミミウイルスと呼ばれるウイルスを発見されたことをきっかけに、これまでのウイルスの概念を変えるような、全く新しいタイプのウイルス「巨大ウイルス」が存在することが明らかになりました。

この巨大ウイルスは、ゲノムサイズや粒子サイズがこれまでのウイルスよりも大きく、タンパク質合成に必要な遺伝子を自分で持っていたり、他の小型ウイルスに感染するなどの特殊な性質を持つことが確認されています。

アメーバを”石”に変えるメドゥーサウイルスの発見

東京理科大学をはじめとする合同研究チームは2019年、北海道にある温泉地域の湯だまりと水底の泥土サンプルから新しい巨大ウイルスを発見しました。

このウイルスは、粒子径が260ナノメートルでゲノム長が38万塩基と、他の巨大ウイルスのなかでは小型ではあるものの、ゲノム内の461個のタンパク質遺伝子のうち61%に相当する279個がデータベースに類似した遺伝子がない新規遺伝子であるなど、他の巨大ウイルスには無いような特徴などが多くみられました。

特に、このウイルスは宿主とするアカントアメーバを感染の過程で細胞を厚い皮を被った休眠状態にさせるため、研究者らはギリシャ神話の怪物「メドゥーサ」にちなんでメドゥーサウイルスと名付けました。

さらに2021年には京都の川からメドゥーサウイルスの姉妹株と考えられる巨大ウイルス「メドゥーサウイルス・ステノ」も発見されています。

▽東京理科大学が作製したメドゥーサウイルスの説明動画

マモノウイルス科を提案

このメドゥーサウイルスは特徴も性質も他のウイルスとは全く異なるもので、新しい「科(family)」を新設する必要があり、2019年の発表当初は「メドゥーサウイルス科」と呼ばれていました。

しかし近年になって姉妹株である「メドゥーサウイルス・ステノ」が発見されたことや、「クランデスティノウイルス」と呼ばれる、メドゥーサウイルスと同じ科に分類される可能性のある近縁のウイルスが発見されるなど、分類上の位置づけを明確にする必要があり、研究チームはICTV(国際ウイルス分類委員会)に対してメドゥーサウイルスの分類において「マモノウイルス科」を新設することを提案しました。

「クランデスティノウイルス」は同研究チームによって近縁ではあるものの、比較解析によって同じ科に属するという積極的な根拠が得られなかったため、現在このマモノウイルス科(mamonoviridae)には、メドゥーサウイルスとメドゥーサウイルス・ステノの1属2種だけが存在します。

域:Realm Varidnaviria(ヴァリドナウイルス域)
界:Kingdom Bamfordvirae(バムフォードウイルス界)
門:Phylum Nucleocytoviricota(核細胞質性ウイルス門)
綱:Class Megaviricetes(メガウイルス綱)
科:Family Mamonoviridae(マモノ(魔物)ウイルス科)
属:Genus Medusavirus(メドゥーサウイルス属)
種:Medusavirus medusaeならびMedusavirus sthenus

研究者らはメドゥーサウイルスの帰属を明らかにすることで「今後の巨大ウイルスの真核生物の進化における生物学的意義に関する研究が促進されることが期待できる」と説明しています。

今後の研究により、もしかしたら”新しい魔物”が登場するかもしれません。

Reference
【続報】真核生物の細胞の自己複製能力の起源を解き明かせるか? ―真核生物の進化の鍵を握る可能性のある新種の巨大ウイルス『メドゥーサウイルス』 研究チームが新作動画、グラフィクスを発表― -東京理科大学-
メドゥーサウイルスの正式な分類の提唱 ―マモノ(魔物)ウイルス科メドゥーサウイルス属―

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