京都大学の研究者はこのほど、盗むのがやめられない窃盗症の患者はスーパーマーケットなどの商品が並んでいる風景に反応し、一般的な人とは異なる反応をすることを明らかにしました。
窃盗症(クレプトマニア)とは?
窃盗症(クレプトマニア)は、盗みたいという衝動を抑えきれず繰り返し盗みを働いてしまう病気で、精神障害診断基準であるDSM-5の「Disruptive, Impulse-Control, and Conduct Disorders (秩序破壊的・衝動制御・素行症群)」に分類されます。
症状が直接犯罪に結びつき、刑罰を与えてもやめられないことから社会的にも、そして患者自身の社会生活にも大きな影響を与えるにも関わらず、窃盗症に関する知見が乏しいためメカニズムや効果的な治療方法などもわかっていません。
京都大学の研究者らは窃盗症患者でどのようなことが起きているのかを詳しく調べるために、窃盗症患者11名と一般人27名を対象に、視線の動きを記録するアイトラッキング装置と、脳の前頭前皮質と呼ばれる領域の活動を測定しながら、スーパーマーケットの風景や商品の画像、まったく関係のない外の景色などを見てもらいました。
窃盗症患者は商品の画像などに特殊な反応をする
その結果、窃盗症患者では、スーパーマーケットの景色や商品の画像が提示されると、一般人とは異なる視線パターンが観察され、脳内では通常とは異なる特殊な反応が確認されたといいます。
論文の特筆者によると、窃盗症患者では視覚的な刺激により生理学的に反応が引き起こされ、結果的に盗みたいという抑えきれない衝動が引き起こされており、薬物依存などと同様のメカニズムが関わっている可能性があるといいます。
窃盗症であることを知らないまま苦しむことも
窃盗症の多くは精神障害であると認知されておらず、自分の意思だけでやめることが困難な状態であるにも関わらず、適切な治療が行われないこともあり、今回の研究成果は窃盗症のメカニズム解明や治療に繋がるだけでなく、治療が必要であることを患者自身や周囲の人々が理解するための一助となりそうです。
Reference
「万引き」依存症のメカニズムを解明―窃盗症が不適応な学習である証拠の発見―