ザトウクジラは求愛の際に歌うことが知られており、これまでの研究で歌には流行や地域差などがあることが判明しています。
一方、最新のクイーンズ大学の研究によると、どうやらオーストラリア東部沖のクジラでは歌うよりも力づくでメスを勝ち取る傾向に変化しつつあるようです。
▽Humpback whales sing to woo females -New Scientist-
オーストラリア東部沖ではザトウクジラの捕獲により一時絶滅寸前にまで追い込まれましたが、その後の捕鯨禁止によって個体数は回復傾向にあり、1997年から2015年にかけてザトウクジラの個体数は約3,700頭から2万7,000頭にまで増えました。
クイーンズ大学の研究チームは、オーストラリアのペレジアンビーチ沖で1999年、2003年~2004年、2008年、2014~2015年のあいだの合計123日間に渡り、ザトウクジラの配偶戦略がどのように変化するのかを調査しました。
その結果、個体数が回復するにつれ「歌う」クジラが減少しており、2003年~2004にかけては2割ほどのクジラが歌っていましたが、2014年~2015年にかけては1割ほどに減少していました。
どうやらこの減少傾向はグループ内のオスの密度と関連しており、オスの密度が高くなるほどクジラの歌う可能性が低下していたといいます。
ライバルが多くなり、なりふり構っていられなくなった
論文の特筆者は、グループ内のオスがあまりに増えると他のオスが「お目当て」に近付かないように、歌うよりも体当たりなどの武力行使によって競争を行っているのではないかと推測しており、さらに以前行われていた捕鯨は成熟したクジラを対象としていたため、グループの年齢構成が変化したことも理由の一つとして考えられると説明しています。
Reference
Post-whaling shift in mating tactics in male humpback whales