虫こぶは、花や実を作る遺伝子を操作して”ハッキング”して作られる

Some kind of weird gall
Some kind of weird gall flickr photo by moonlightbulb shared under a Creative Commons (BY) license

植物の葉や茎などに、異常なこぶや、気味の悪いぶつぶつを見たことは無いだろうか?もちろん細菌やウイルスにより作られた病気である場合もあるが、なかには昆虫が植物に”作らせた”ものが存在する。

これらは虫こぶと呼ばれるもので、昆虫が植物に寄生し、植物組織が異常な発達をしてできたものだ。この虫こぶは昆虫にとっての身を守るためのシェルター、または食料となるもので、昆虫の種類によって様々な形状・色の虫こぶが作られる。

しかしながら、昆虫が虫こぶを作る詳細なメカニズムは明らかになっていない。京都府立大学と京都産業大学らによる共同研究チームは、アブラムシの一種であるヌルデシロアブラムシが、どのようにしてヌルデに虫こぶを形成させているか解析を行った。

ヌルデシロアブラムシのメスは、ヌルデの新しい葉に特殊な器官で化学物質を注入し、五倍子またはヌルデミミフシと呼ばれる、もこもことした虫こぶを形成する。ヌルデシロアブラムシのメスはこの虫こぶのなかで単為生殖によって増殖し、集団生活をしながら数世代を過ごす。よほどの物好きでない限りは、この虫こぶを決して開いてはいけない。

研究者らがこの虫こぶをRNAシーケンス解析によって、発現した遺伝子を解析すると驚くべきことが分かった。本来、葉で発現するはずの光合成関連の遺伝子が抑えられ、そのかわりに花や果実の形成を制御する遺伝子や、組織を硬くするための遺伝子が顕著に発現していたのだ。

また、研究者らはヌルデシロアブラムシが持つ「植物ホルモン」に注目。このアブラムシはオーキシンとサイトカイニンというホルモンを高濃度に蓄積していたのだ。

どうやらヌルデシロアブラムシは植物の葉の一部を分化(葉になる)前の状態に戻し、そこに実や花を作る遺伝子の発現を活性化して虫こぶを作り出しているようだ。しかし、ヌルデシロアブラムシから見つかった高濃度のオーキシンやサイトカイニンだけでは、虫こぶのような複雑な器官を作り出すことが説明できない。研究者らは、このアブラムシが他にも未知の誘導物質を注入して、植物の発生システムを高度に操作していると推測している。

Gall2Gall2 flickr photo by chidorian shared under a Creative Commons (BY-SA) license
ヨモギの虫こぶ。ぶつぶつしたものや歪(いびつ)なものが多い虫こぶのなかでも、大変かわいらしい。

この未知の誘導物質の正体が明らかになれば、虫こぶのような構造を私たちが自在に作り出し、有用な物質を大量に蓄積させるという技術が開発できるかもしれない。