夫の飲み水に目薬を混ぜて殺害、映画からアイデアを得る――アメリカ・サウスカロライナ

2020年1月16日、アメリカのサウスカロライナ州で夫の飲み水に薬物を混ぜて殺害した女性の裁判が行われ、25年の禁固刑が言い渡されました。女性が飲み水に混ぜた薬物はなんと「目薬」でした。

2018年の7月頃、理学療法の会社を経営していたスティーブ・クレイトン氏(Steve Clayton)は自宅の階段から落ちて、その後死亡が確認されました。不審な様子も特になかったために、当初は事件性はないと考えられましたが、検視で行われた薬物検査ではテトラヒドロゾリンが検出されました。これは目薬に含まれる成分です。

検出されたテトラヒドロゾリンとは?

テトラヒドロゾリンは、一般名では「塩酸テトロヒドロゾリン」として知られており、血管を収縮させる働きがあるため、目の充血を抑えるために目薬や、鼻粘膜の腫れを抑えて鼻づまりを解消するため、おもに点鼻薬に使われる成分です。

目や鼻など、局所的に使用することによって効果を発揮するテトラヒドロゾリンですが、多量に摂取すると血管の収縮により血圧が上昇するため、心悸亢進や不整脈などの症状を引き起こし、さらには神経に作用して頭痛やめまい、吐き気、脱力感、重症になると昏睡状態になることもあるといいます。

捜査当局は事件の8年前に結婚していた妻のラナ・クレイトン氏(Lana Clayton)を、スティーブン氏が死亡した翌月に殺人容疑で逮捕しました。のちに彼女は目薬を飲み水に入れたことを認めたが、事情聴取で驚くべきことが明らかとなりました。飲み水に目薬を入れるアイデアは、なんと「映画」で使用されたトリックを参考にしたものでした。

目薬を混ぜるアイデアは映画作品から

どの映画を元にしているかは語られていませんが、2005年に制作されたロマンチック・コメディ映画『ウェディング・クラッシャーズ(Wedding Crashers)』では、登場人物が飲み水に目薬を入れ、相手を体調不良にさせて退席させるというシーンがあり、過去にもこの映画を参考にしたとされるような事件がいくつも報告されているといいます。

ただし、この映画では被害者が体調不良になるだけで、死亡には至っていません。

法廷で、ラナ・クレイトン氏は日頃から家庭内暴力を受けており、目薬を混入させて体調不良にすれば暴行が収まると考えた”故意の殺人”であったと主張しました。

しかし元看護士であった彼女ならば、目薬の成分が高齢の夫に対してどのような作用を引き起こすか容易に想像できたとされるうえ、事件直前には夫が所有する電話を捨てて、助けを呼べない状態にしていたといいます。

捜査当局はさらに殺人の動機についても証拠を掴んでいました。彼女はなんと夫の遺言状も処分しており、遺産をすべて自分が相続できるようにしていたといいます。

これで、少なくとも時価総額8,900万円にもなる邸宅を手に入れることができたとされています。最終的にラナ・クレイトン氏は計画的殺人による有罪で、25年の禁固刑が言い渡されることになりました。

目薬の誤飲にも注意

目薬には、今回の事件で検出されたテトラヒドロゾリンだけでなく、ナファゾリンやキシロメタゾリンといった血管を収縮させる働きを持つイミダゾリン誘導体の有効成分がよく配合されています。

死亡例はほとんど報告されていませんが、小さい子どもは何でも口にしてしまうため保管には十分な注意が必要です。そして、このトリックをくれぐれも悪用しないように…

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