グンタイアリに噛みつかせることで傷口を縫合するライフハック

もしジャングルの真ん中で怪我を負ってしまったときにはグンタイアリが役に立つかもしれません―――

アクション映画などで、医療用ホッチキス(スキンステープラー)を使って傷口を塞ぐシーンを見たことはないでしょうか。皮膚が裂けて傷が開いてしまうような場合には、傷口の皮膚と皮膚を縫い合わせて縫合することによって傷の治りを早くすることができます。

しかしながら、もしジャングルの奥地で医療道具などが何もないなか、怪我を負ってしまうというピンポイントな状況に対処するにはどうすればよいでしょうか。そこで利用するのがグンタイアリです。

グンタイアリとはアリ目グンタイアリ属に分類されるものの総称で、大きな顎を持ち、その名の通り隊列を組んで”軍隊”で行進し、他の昆虫から大型哺乳類まであらゆる生物に襲い掛かり食い殺します。

グンタイアリが噛みつく際には、大きな顎を外敵に突き立てて強い力で噛みつきます。この性質を利用して、数匹のグンタイアリを使い、まるで医療用ホッチキスのように皮膚と皮膚の間を縫合し、あとは頭部以外を切り離せば縫合完了です。


Leaf-Cutter Ants in Wound Closure -WEM Wilderness and Environmental Medicine-

このアリによる縫合方法は古くから利用されており、どれほど長く利用されているのか正確にはわかっていませんが先史時代にまで遡る可能性があり、学術的には今から約100年前の1925年に論文として取り上げられました。

この論文を特筆したE. W. Gudgerは有名な魚類学者で、どういった経緯で200年以上もの歴史ある米国医師会雑誌『JAMA』に発表することになったのかは定かではありませんが、研究者なら誰しもが興味をそそられる内容であることは間違いありません。


credit by I’m A Useless Info Junkie

この方法で縫合する場合は、グンタイアリに限らず、サシハリアリ(パラポネラ)と呼ばれるものやハキリアリといった大きな顎を持つ種であれば利用することができます。とはいえ、サシハリアリは刺されると弾丸で撃たれたような激痛に襲われるため、あまりおすすめではありません。

エピネシス・コラムズ
サシハリアリは別名「弾丸アリ」と呼ばれています。アメリカの昆虫学者であるJustin O. Schmidtが、自ら刺されることによって痛みの強さを分類したシュミット指数では、最も痛い「4」に分類されています。

アリの分泌物によって細菌感染が抑えられる可能性も

傷口が開いているとき、必ずしも縫合することが良いこととは限りません。例えば、動物などに噛まれた場合については、動物の口の中に存在する菌が傷口の奥深くに入り込み、あとで細菌感染などを引き起こす可能性があり、この場合は縫合せずにむしろ傷を切り開くことがあります。

そもそも細菌感染を防ぐことが縫合を行う理由の一つですが、アリの頭部を使って縫合を行うことは細菌感染のリスクを高め、本末転倒に思われるかもしれません。

しかし2019年に発表された論文では、あくまで正式なものではありませんが、何もしない傷よりも、ハキリアリで縫合した傷の方が細菌感染しにくいといった報告があるようです。

論文の特筆者はおそらくハキリアリが化学的防御のために分泌している化学物質が細菌感染を抑えている可能性があるのではないかと指摘していますが、詳しいことはわかっていません。

▽グンタイアリを利用した縫合方法

いずれにしても、アリの頭部を使って縫合を行うことは全くもってリスクの高い治療であることに間違いありませんが、医療がなにも受けられない、本当に限られた状況下では選択肢の一つとなるかもしれません。

そもそもグンタイアリがいるようなジャングルで、グンタイアリを捕まえて縫合できる勇気とバイタリティを持ち合わせていれば、恐らくは生き残ることができるでしょう。

Resource
Ants as sutures? -LIFE IN THE FASTLANE
Leaf-Cutter Ants in Wound Closure -WEM Wilderness and Environmental Medicine-

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