「ヒト以外で生息環境を作り替える唯一の動物」とも呼ばれているビーバー。ダムの建設や食料となる枝葉や樹皮を確保するために”木を伐採する”という変わった性質を持っており、鉄が含まれている特殊な4本の前歯を使って、小さな木なら数分もあれば伐採してしまいます。
▽この程度の太さの木なら10分で伐採することができます。
Beaver chews down tree in forest; tries to remove it, then chews off a small chunk of the trunk -Mike’s Videos of Beavers-
しばしばビーバーは、人間なら電動工具を使わなければ伐採できないような、太い木を数週間かけて伐採することもあります。
しかしながら、人間であっても十分な安全管理を行わなければならない、大きく重い木の伐採をビーバーができるのでしょうか?
ビーバーの伐採は命がけ
大きな木の伐採は人間でも命を落とす事故が起きるように、ビーバーにとっても命がけです。
木が倒れていることに気付かないまま木をかじり続けてしまうと、倒れる木に頭がはさまってしまう可能性がありますし、倒れてきた木に逃げ遅れて重い木の下敷きになってしまう危険もあります。
そのため、あまり知られていませんが、ビーバーは長い進化の歴史のなかで”ある能力”を発達させてきました。
木が倒れる状態にあるかどうかを正確に予測する
ビーバーはなんと、「どのくらいで木が倒れるのか」をほとんど正確に予測することができるのです。言葉ではこのすごさが分かりづらいため、さっそく実際の動画をご覧ください。
▽木をかじる途中で何かを察知したのか、いきなり動きがピタッと止まるビーバー。
Beaver cutting trees Down Bushnell Trophy Cam
▽ビーバーがその場を離れると、まもなく木が激しい音を立てて倒れてきました。
Beaver cutting trees Down Bushnell Trophy Cam
木が倒れだしてから逃げ始めるようでは倒木に巻き込まれる危険があるため、このようにビーバーは「何もしなくても勝手に木が倒れる」ような状態になると、かじるのをやめてその場を離れ、あとは風や自重で倒れてくるのを待つのです。
木のわずかな揺動か、きしむ音で察知しているのか――どういった基準でかじるのをやめているのか全く分かりませんがまさに職人技です。
まったく事故が起きないわけではない
ただし、こうした”職人技”を持っているからといって事故がまったく起きない訳ではありません。
例えば風の強い日や突風が吹いたり、木の内部が腐ってもろくなっている場合や、上にある枝の部分が他の木に絡んでいるような場合には複雑な倒れ方をすることがあり、このような場合にはときに不幸な事故が起きてしまうこともあります。
▽伐採作業中でも常に木に細心の注意を払っているため、不測のタイミングで木が倒れても余裕で逃げ切ることができます。
通常、ビーバーは木の片側のみを深くかじることで、木が倒れる方向を高い精度でコントロールして予測していますが、若いビーバーの場合では経験が浅いため、予期せぬタイミングで倒れてきたり、逃げる方向と重なってしまうこともあります。
このようにしてビーバーが木に挟まれたり、下敷きになってしまうことはとても珍しく、しばしば地元紙のニュースとして取り上げられることもあるのだそう。
今回ご紹介した動画のほとんどはハイライトシーンから始まっているため、お時間がある時にはぜひフルでお楽しみください。