青いダンゴムシは間もなく死んでしまう、その理由とは?

青いダンゴムシ、またはワラジムシを見たことはあるだろうか?

ワラジムシ目では、稀に体色が青く変化した個体が見つかることがある。これは、例えばアルビノのような先天的な色素の異常によって起きるものではない。下の写真のような青いワラジムシも、元々はよく見られるような茶褐色の個体であったのだ。


Rathki’s Woodlouse infected with Iridovirus flickr photo by treegrow shared under a Creative Commons (BY) license


Rathki’s Woodlouse flickr photo by treegrow shared under a Creative Commons (BY) license

このワラジムシは”あるウイルス”によって体が蝕まれており、もう間もなく死んでしまう。この異常な青さは、死期が迫っていることを示す末期症状なのだ。なぜ、体が青くなってしまうのだろうか。実は、この”青色”こそが体を蝕んでいる正体そのものなのだ。

イリドウイルスと呼ばれるウイルスがダンゴムシなどに感染すると、体内で増殖して結晶化し、体に蓄積されるようになる。この青い色はなんと、ウイルスそのものなのだ。
変化したのはその見た目だけではない。通常、ダンゴムシは枯れ葉や石の下などといった暗い場所を好んで生活しているが、興味深いことに、このイリドウイルスに感染したダンゴムシは明るい場所に出てくるようになるという。

イリドウイルスに感染した個体は、青色になって非常に目立ちやすいうえに、明るくて見つかりやすい場所に出てくるようになるため、鳥にとっては格好の餌食となってしまう――
それこそが、このイリドウイルスの”戦略”なのだ。ウイルスは鳥によって遠くへと運ばれ、フンとして各地にばら撒かれる。このフンを食べたダンゴムシはイリドウイルスに感染し、再びあの不気味な青い姿へと変貌してしまうのだ。

近年の研究によると、特定の国ではウイルスの遺伝配列がほぼ一致していることから、どうやらイリドウイルスは渡り鳥を介して国から国へと移動しているのだという。


A “woodbug” found in the back yard flickr photo by Schill shared under a Creative Commons (BY) license

あらゆる生物に感染する

イリドウイルスに感染するのはワラジムシ目だけではない。実は、イリドウイルスには様々な種類があり、ほ乳類から魚類、両生類、昆虫、軟体動物などあらゆる生物で感染が確認されている。最初にイリドウイルスが発見されたのは1954年、クロード・リバース(Claude Rivers)という研究者によって、ガガンボという虫の幼虫から初めて分離された。

イリドウイルスに感染した昆虫は体の一部、あるいは全体が青紫や、青緑、赤紫、乳白色に変色し、しばしば虹色の光沢(イリデッセンス)が現れる。イリドウイルスの名前は、このイリデッセンスに由来している。

あらゆる生物に感染するイリドウイルス——ワラジムシ目にみられる変化は、イリドウイルスの影響が顕著に表れる一例に過ぎないのだ。

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