アンパンマンの科学――なぜ子どもたちに大人気なのか?

2019年3月8日


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子どもから絶大な人気を誇るアンパンマン。子どもの頃にアンパンマンを見て育ったという方も多いだろう。アンパンマンは漫画家、故やなせ たかし氏が描いた絵本を原作とするもので、1969年に描かれた当初は空を飛んで世界中のお腹を空かせた人にあんぱんを配るやや太ったおじさんとして描かれ、最後には敵機と間違えられ撃墜されてしまう。現在のアンパンマンの設定は何度も修正を重ねて生み出されたものだ。子ども向けの作品として大成功したアンパンマンは、なぜ子どもたちに愛されるのだろうか?

1つ目に注目すべき点は顔のパーツだ。幼児が描くヒトの顔は顔の輪郭のみが描かれている場合が多い。これは幼児がとして認識するための最小構成要素であるからだ。この幼児たちが描く絵に、3つの丸を描き足すだけでアンパンマンの顔に非常に近くなる。

アンパンマンのシンプルな作りの顔は幼児たちにとって覚えやすく描きやすい。また、曲線的な丸い顔は「かわいい」などの好意的な印象を与えやすく、アンパンマン以外の人気のキャラクターをみても、多くは曲線で構成されている。これは”ベビースキーマ”または”ベビーフェイス”と呼ばれる心理的効果で、多くの人は、赤ちゃんに見られるような丸みのある顔身体的特徴について親近感を抱きやすい。

”アンパンマン”という名前も重要な要素の一つだろう。生後10か月頃の赤ちゃんからもよく聞かれるような、音を発しやすい「あ」・「ん」・「ぱ」・「ま」の4つから構成されており、アンパンマンという「ん」を繰り返し発する規則的な音節は特徴的で覚えやすい。いくつかの研究によって、発音の規則性発音のしやすさ(発音容易性)は、その言葉の記憶の定着に大きく影響を与えることが知られている。

アンパンマンが人を助ける様子は、子どもたちに好感を与える大きな要因の一つだ。これについて、アメリカのエール大学が2007年に行った実験がそれを裏付ける。生後6~10か月の赤ちゃんを対象に人形が坂を登ろうとする様子を見せ、人形がなかなか坂を登れないところに、別の2つの人形を用意する。一方の人形は坂を登ろうとする人形を助け、もう一方の人形は坂から突き落として妨害する演出を見せた。その後、赤ちゃんに後から登場した2つの人形のうち、どれか好きな人形を選んでもらうと80%の赤ちゃんが助けた人形を選んだという。生後6~10か月くらいの赤ちゃんでも多くはどうやら”正義の味方”が好きらしい。


My wife handmade the felt-book for her second daughter. flickr photo by MIKI Yoshihito. (#mikiyoshihito) shared under a Creative Commons (BY) license 

しかしながら、アンパンマンはただ子どもたちにとって呼びやすく、覚えられやすく、親しまれやすいだけではない。アンパンマンの登場キャラクター数は作品が作られてから2009年までに登場したものだけで1,768体も存在するのだ。この登場数はギネス世界記録に認定されている。放送のたびに登場する魅力的なキャラクター、そして故やなせ たかし氏のアンパンマンシリーズに対する情熱もまた、子どもたちから大人気な理由の一つなのだ。

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