食べた相手の武器を再利用する、アオミノウミウシの「盗刺胞」とは?

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by Sylke Rohrlach from Sydney (Blue dragon-glaucus atlanticus) [CC BY-SA 2.0 wiki commons

刺胞とは、クラゲやイソギンチャクなどの細胞にある毒針のことで、彼らにとってのいわば武器だ。刺細胞と呼ばれる特別な細胞に備わっているこの毒針は、細胞が刺激を受けると飛び出して相手を刺し、同時に毒液を相手へと送り込む。

ミノウミウシの一種であるアオミノウミウシも、この刺胞を持つ生物の1つだ。とても美しい姿とは裏腹に、ヒレにあるそれぞれの突起には刺胞が備わっている。ただし、これはただの刺胞ではない。なんと、アオミノウミウシは食べた相手の刺胞を奪い、自らのヒレへと移動させて再利用するのだ。

アオミノウミウシが食べるのは、強力な毒を持つことで有名なカツオノエボシだ。アオミノウミウシはカツオノエボシが発射する刺胞をものともせずに食べ、さらに未発射の刺細胞を取り込んで自らの武器とする。なぜ刺激が与えられているにも関わらず、刺胞が発射されないのかについて詳細なメカニズムは明らかではないが、恐らくは分泌された粘液が刺細胞をコーティングをして、刺胞の発射を防いでいるものと考えられている。

毒はカツオノエボシが由来とはいえ、大量の刺胞を持っているわけではないのでそこまで強くはないが、油断は禁物だ。オーストラリアでは異常気象によって2017年にアオミノウミウシが大量発生し、クイーンズランド州沿岸部で63人もの海水浴客が病院に搬送された。アオミノウミウシに限らず、ミノウミウシのほとんどはこの盗刺胞を持っているため、綺麗だと思ってもうかつに触らないように気を付けなければならない。

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ミノウミウシ以外にも、盗刺胞の仕組みを持つものにフウセンクラゲモドキもいる。また、ウミウシの仲間には他にも、藻類などに含まれる葉緑体を自らの体に取り込んで、この葉緑体からエネルギーを得るものもいるのだ。自らの体で作り出さずに、食べたものを再び利用する――驚くべき仕組みだ。

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