Garden Canopy flickr photo by kvijesh shared under a Creative Commons (BY) license
幼児が描く絵はとても興味深いものです。大人がりんごを描くのであれば誰もが赤色や緑色に塗りますが、子どもたちにとっては本物の色は大きな問題ではありません。それぞれ自分の好きな色で塗るために、りんごはしばしば青色や紫色といった色で描かれることもあります。
また、風景を描くにしてもそこには登場しない母親や、飼っている動物などといった「自分の好きなもの」が描かれることもあるし、たとえ用紙から絵がはみ出してもお構いなしです。
このように、子どもの絵には本人の常識や願望、信念や思想などの性格や心理状態などが、少なからず絵に反映されていることが分かります。
1949年、スイスの心理学者であるカール・コッホは子どもたちに「木の絵」を書かかせて、その絵から性格や発達段階、願望や欲求などを読み解くという投影法を用いた検査方法を確立させました。これがバウムテストです。
バウムテストの方法は非常に簡単です。皆さんも紙と鉛筆を用意してみましょう。紙の大きさは特に指定はありませんがA4サイズ程度がちょうど良いでしょう。
この用紙を縦向きにして、そこに木の絵を描いてみてください。
木の大きさの解釈
・用紙いっぱいに木の絵が描かれている場合
自分に自信があるようですが、やや自己中心的な傾向があるようです。
・木の絵が用紙の1/3程度しかない
あまり自信がないか、現状に不満があって安心を求めています。
・木の絵が用紙からはみ出している
感情のコントロールがしにくい。
・余白と木の割合がちょうど良い
周囲とよく協調してバランスを取ることができる。
用紙に描かれた木の位置の解釈
・用紙の中心に木の絵が描かれている
精神的に安定している。
・用紙の上側に木の絵が描かれている
やや空想的な傾向があって飽きっぽい。
・用紙の下側に木の絵が描かれている
現実主義的な傾向がある。
・用紙の右側に木の絵が描かれている
相手を支配しようとする傾向にある。
・用紙の左側に木の絵が描かれている
やや内向的で、現実逃避しやすい傾向にある。
木全体の様子の解釈
・全体が詳細に描かれている
完璧主義的で細かいことまで気にする傾向がある。重要なことと、そうでないことの判別が難しい。
・木の右側がよく強調された絵
現実、未来に対して意欲的であり、前向きに物事を考えることができる。
・木の左側がよく強調された絵
過去、自分に対して執着的であり、過去の出来事を引きずりやすい。
・下から見上げたように描かれた絵
人には話せない何らかの願望があり、達成できていないが諦めきれていない。
・上から見上げたように描かれた絵
やや自信過剰な傾向がある。
・木が2本描かれている
自分の過去を抑圧しており、新しい自分を再構築しようと試みている。
・木が3本以上描かれている
自主性の欠如を示している。集団の中で自分の価値を見失っている。
・風に吹かれている
外部からの影響によって内側に引きこもったり、強制させられていることを示す。
Tree fractal flickr photo by Arenamontanus shared under a Creative Commons (BY) license
木の幹と樹冠(葉が茂っている部分)のバランスの解釈
・幹が短く、樹冠が大きい
周囲から認められたい傾向。自己評価が高く、他者の欠点はすぐに目につく。
・幹部が長く、冠部が小さい
精神面での発達の遅れを示す。未成熟的な傾向がある。
幹の様子の解釈
・電柱のように幅が均等になっている
頑固で融通性に欠ける傾向にある。
・幹が細く震えた線で描かれている
精神的に不安定になりがち。
・途中に膨らみやくびれがある
周囲の目が気になってストレスを溜めやすい。
・樹皮が描かれている
他人からどう思われているかをよく気にする。
・幹の部分が大きく強調されている
自己愛が強く、肥大した自我を持っている。
・根元部分が強調されている
現状に不安を抱いており、常に安定感を求めている。
・幹が蛇行している
外部からの妨害によって自分自身の欲求が抑圧されている。
・根に近い部分で分岐している
多重人格的な傾向を示している場合がある。
・幹が右に曲がっている
順応的でお人好しな性格。
・幹が左に曲がっている
引きこもりがちな性格。
・幹が左右どちらかに大きく曲がっている
ひねくれていて、素直に受け入れられない性格。
・幹を黒く塗る
自分自身を否定したり嫌っている。幼児期に親からの愛情をあまり感じていない。
枝の様子の解釈
・枝がさらに小枝に分かれている
平和や調和を重視する傾向にあり、協調性がある。ただし小枝が著しく多い場合は空想にふけりやすい傾向にあり、軽い躁傾向にあると捉える。
・大きな枝しか描かれていない
外交的で感受性が強く、様々な方面に興味を持つ。
・枝が切られている
自分を発揮できていないと感じており、周囲から認めてもらえないことに不満や挫折感を自覚している。
大きい枝が切られて切り株状になっている枝は過去にあった心の傷を表す。
・枝が交差している
感受性や独創性が高く芸術肌だが、自己中心的で他人に対し批判的な傾向にある。
・枝が下がっている
自身の置かれている環境に不満があり、無気力になっている。
・枝がギザギザと曲がっている
不安を抱えやすく、衝動的な行動をとることがある。
・枝がグニャグニャと曲がっている
マニアックでこだわりが強く執念深い。
・枝の根元に線が描かれている
論理性が未熟で、自分は常に安心であると思い込む。
・放射状に枝が広がっている
多岐に渡る興味や関心を示すが、注意力が散漫な傾向にあり不安定。
・噴水状に枝が広がっている
注意力の散漫があり、投げ出しやすい傾向を示す。
・枝が棚のように並行して硬直している
指示がないと動けない傾向を示す。
枝がない場合の解釈
非社会的な傾向を示していることがあります。
発達が遅れているか、認知機能に問題がある場合があります。
葉の様子の解釈
・葉が大きく描かれている
無力感を持ちながらも、表面的には適応を示す。
・葉が一枚一枚丁寧に描かれている
完璧主義的で、自己顕示欲が強い傾向にある。
・葉脈が描かれている
対人関係が過敏で、人の目を気にする傾向にある。
・葉が描かれていない
自己表現が上手ではなく、人との関わりを苦手としている。孤独感を示している場合もある。
・大量の落ち葉
大きな失敗や挫折感を示す。目標の達成による虚脱状態を示している場合もある。
地面の様子の解釈
・丘の上に木が立っている
自分中心的な考えの表れ。リーダーシップを示す。
・地面がでこぼこしている
心配性で不安感が強い傾向にある。
・地面が塗りつぶされている
身近な人への嫌悪感や不信感を示している。
・地面が埋もれるほど草が生い茂っている
現状に満足して怠けたいという気持ちが強い。依存心が強く甘えたがり。
・根っこが浮き上がっている
自分を実力以上に誇張して表現する傾向にある。
・紙のふちを地面としている
不安感があって落ち込みやすい。子供の場合は特に親からの分離不安を示している場合がある。
・地平線が高く描かれている
現実逃避の傾向、あるいは状態を示す。
Arbre flickr photo by Poowlyne shared under a Creative Commons (BY-ND) license
果実部分の解釈
適度に果実が描かれている場合は目標が達成されていることを示す。女性の場合は子どもが欲しいという欲求を示している場合がある。著しく果実が多い場合は精神がやや病的な傾向にある。
・いろんな種類の果実が描かれている
精神的な未熟を示しているが、発想が豊かでユーモアのセンスがある。多くのことに興味を示すが、短絡的な成果を求めやすい。
・果実が落下している
諦観や失敗などを示している。女性の場合は子どもの独立といった喪失感などを示す場合がある。
その他の解釈
・木が柵で囲まれている
臆病で用心深い性格。周囲の不幸をあまり気にしない。
・木に鳥が描かれている
明るい気分や希望を表している。鳥の巣や卵が描かれている絵は家族の温かさを感じているか、それを求めていることを示している。巣だけが描かれている場合は喪失感や無力感を表している場合がある。
・虫が描かれている
未熟を示しており、依存心がある。自己蔑視の表れである場合もある。
・花や鳥、虫などが描かれている
周囲からの人気を求め、目立ちたいという気持ちを表す。
・額縁が描かれている
自殺願望を示していることがある。
・絵を書かない
本当の自分を知られたくない。
・絵が非常に雑
精神的な不安、または飽きっぽい性格。投げやりな絵は反社会的でモラルの欠如を示す。
・用紙を横書きに使う
周囲が自分に合わせるべきだという自己中心的考えがあり、無意識のうちに周囲と反発する。実際のバウムテストでは縦書きの指示は特に無いが、紙があらかじめ縦に置かれて用意される。
木を描いた順番についての解釈
・木を書いてから地面を描く
ふだんは安定しているが突発的に怒ることがある。
・地面を描いてから木を描く
他人に依存する傾向。
・葉の部分から描く
不安定で周囲からの目が気になって表面的な見栄えを求める。
絵を描く早さの解釈
・描き上げるのが早い
やや衝動的で自己主張が多く攻撃的。
・描き上げるのが遅い
慎重で優柔不断な傾向にある。
筆圧の解釈
・筆圧が強く、線が太い
自己主張が多くて攻撃的な一方、活発で積極的。
・筆圧が弱く、線が細い
やや無気力で消極的な傾向。不安や恐怖を抱えていることを示す場合もある。
異常とも取れる絵が描かれている場合の解釈
基本的にバウムテストは鉛筆を握ることが困難な5歳未満ではうまく診断できないことがあります。
また、「枝がない」「人間の姿をしている」というような、異常と感じられる絵であったとしてもまず心配することはありません。バウムテストは性格や傾向を知る「手掛かり」となるものに過ぎず、明らかに異常ともとれる絵が描かれたとしても、それが直ちに反社会的であったり病的な傾向を示すものではありません。
ただし、認知機能に問題があったりや精神的な障害がある人では木が異常に小さく、形が歪(いびつ)になる傾向がよくみられます。
バウムテストは大人では適さない場合がある
バウムテストは子どもの性格や傾向、発達段階などを診断することが多いため、大人では当てはまる項目が少なく、正確に診断できない場合があります。
特に絵を書くことが得意な人や、木に関する知識が豊富な人にとっては、想像ではなく具体的な木の種類や実際の風景を思い浮かべて描かれることもあるため、そもそも検査に適さない場合があることには注意が必要です。
また、実際のバウムテストはカウンセラーによって専門的に行われるため、この結果はあくまで参考程度に留めておきましょう。