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トマト、新聞紙、 黄色い木・・・この言葉を聞いて、何かお気付きだろうか。
そう、これらの言葉は逆から読んでも同じ言葉になるのだ。このような文章は回文と呼ばる言葉遊びの1つだ。上記以外には他にも「竹やぶ焼けた」、「ニワトリと小鳥とワニ」などがあり、近年では「髪の毛残り無くなり、この毛のみか」など長くて面白い回文が度々作られて話題になる。
古くは寛文元年に発行された『紙屋川水車集(かみやがわみずぐるましゅう)』には”はれけき先の日 あのつま香をもとめむ 色白いむめども 岡松のあのひのき さきければ”という41文字の長い回文が紹介されており、400年以上前には既に回文が人々の間で楽しまれてきた。
日本だけでなく海外でも広く親しまれており、英語では”Was it a cat I saw?”(私が見たのは猫だったのか?)、中国では”上海自来水来自海上”(上海では以前から水を海上から引いている)など、とてもユーモアに溢れている。
数学においても11や121、7447など逆から並べても同じ数になる回文の性質を示す数が存在する。これらを回文数といい、英語では回文(palindrome)の数字であることから”palindrome number”と呼ばれている。ただし数学では1や6などの1桁の数も回文数として扱うことに注意が必要だ。意味のある言葉で作られる回文とは異なり、ただ数字の組み合わせだけで簡単に、しかも無限に作ることができる回文数は特に面白いと感じる人は少ないだろう。しかしながら、この回文数には”ある興味深い性質”が隠されているのだ。
回文数の不思議な性質
まず、好きな2桁の数字を1つだけ決めよう。(ちなみに「89」では試さない方がいいだろう。)
ここでは、「78」を例に挙げる。そして、その2桁の数を逆から並べ替えた数字と足し合わせる。78であれば、並び替えると87となり、これらを足し合わせると78+87=165となる。そして再び新たに作られた数字と、逆に並び替えた数字を足し合わせる操作を続けてみよう。
78+87=165
165+561=726
726+627=1353
1353+3531=4884
このように、ある任意の2桁の数とそれらを並び変えた数字を足し合わせる操作を繰り返すと、必ず回文数になるのだ。(「89」でこの操作を行うと24回操作してようやく13桁の回文数になる。)
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では、3桁の数ではどのようになるのだろうか。試そうと思っているのなら運が良ければ、あるいは悪ければその操作は延々と繰り返すことになってしまうだろう。3桁の場合、ある13個の数だけはどれだけ繰り返しても回文数にならないのだ。
196,295,394,493,592,689,691,788,790,879,887,978,986
これらの数では先ほどの操作をいくら繰り返しても回文数にはならない。興味深いことに、これらの数は最終的に回文数になるのか、ならないのかも分かっていないのだ。この数学上の問題は13個の数のうち、最も小さな数である196を名前にとって「196問題」と言われている。
未解決の196問題
ちなみにこれら13個の数のうち、790を除いた12個の数字はそれぞれペアになっている。例えば196が回文数になるかどうか確かめるときには、その数字を逆から並び替えた数である691を足すことになるが、これは691が回文数であるかどうかを試す場合と同じ計算になるからだ。つまり169を並び替えた961、295を並び替えた592、394を並び替えた493・・・このように、6つのペアができることになる。
この問題は50年ほど前から知られており、1970年代にアメリカの科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」おいて数学者のマーティン・ガードナーがこの196問題について取り上げている。現在はスーパーコンピュータによって2億8900桁まで確かめられているが、現在までにこれらが回文数に収束するかどうかは分かっていない。回文数には、一体どんな秘密が隠されているのだろうか――