山火事を利用するオーストラリアの「ユーカリ」

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全てを焼き尽くす山火事。オーストラリアでは非常に乾燥しやすい気候のため山火事は高頻度で発生している。ひとたび燃え広がれば森の動物や植物はもちろん、人間さえも為す術は無い。発生する山火事のなかには残念ながら放火や火の不始末などが原因である場合もあるが、発生する山火事の半分は落雷などの自然現象によって発生するという。太古の昔から繰り返されてきた山火事はオーストラリアに生きる植物たちに大きな影響を与え、いつしか植物たちは山火事という天災すらも生活サイクルとして組み込むことに成功したのである。


Eucalyptus 38 flickr photo by jar [o] shared under a Creative Commons (BY) license

コアラが大好きなことでも知られるフトモモ科の植物「ユーカリ」。このユーカリの樹皮は非常に燃えやすいことで知られている。その一方で、樹皮の内側部分は燃えにくいためユーカリの幹に火が移ると、外側の樹皮だけが燃え落ちて内側にある形成層は守られるのだ。
また、ユーカリは自らが葉で作り出す物質によってつぼみの発芽を抑制しているが、山火事が起きるとこの発芽を抑制している葉が焼失するため、山火事の後にすぐつぼみから芽が作られる。
普段はリグノチューバーと呼ばれる塊状の器官に栄養を蓄えておき、普段は発芽を抑制しておくことで、山火事が起きてもいち早く芽を出して回復することができるのだ。

山火事の後で発芽するのはつぼみからだけではない。ユーカリの種類によっては、山火事などによって生じる高熱や煙にさらされることによって種子の発芽が促進されるものがある。山火事が終わるタイミングで発芽することで焼けた地上を他の植物に邪魔されることなく独占することができるのだ。


IMG_1426 flickr photo by miheco shared under a Creative Commons (BY-SA) license
ユーカリの果実。この中には種子が入っており、多くは山火事によって焼かれることで種子がばら撒かれるようになっている。また、種子は熱や煙にさらされることによって発芽が促進する。

ユーカリの巧妙な戦略はこれだけに留まらない。ユーカリはテルペンと呼ばれる引火性で揮発しやすい物質を空気中に放出するのだ。さらに、このテルペンは気温が高いほど空気中により放出されやすくなることが知られており、ただでさえ気温が高く乾燥した状態でユーカリから大量のテルペンが放出されると森は山火事が非常に起こりやすい状況が整ってしまうのだ。

山火事を発生させやすくして、自らは防御機構で身を守り、山火事が終わった後でどの植物よりもいち早く芽を出して成長する――こうしてユーカリはオーストラリアの森林の4分の3を占めるまでに繁栄することができたのである。