カタツムリに寄生し、行動を支配する寄生虫「ロイコクロリディウム」


Snail flickr photo by marklington shared under a Creative Commons (BY) license

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そのあまりに衝撃的な姿を一度見たら、もう忘れることはできないだろう。カタツムリの触覚に寄生し、姿だけでなく習性をも変えさせてしまう寄生虫「ロイコクロリディウム」だ。

扁形動物門吸虫網に属するこの生物は生活史の中でオカモノアラガイというカタツムリの一種と鳥の体を行き来する。

まず鳥の体内でロイコクロリディウムの成体が産卵を行い、これが糞と一緒に排出される。この卵の混ざった糞をカタツムリが食べると消火器管内でふ化し、カタツムリの触覚部分へと移動する。興味深いことに、ロイコクロリディウムが移動するのは左目である場合が多いという。

成長したロイコクロリディウムの体色は色鮮やかで、特徴的な斑紋を持つ。さらに虫体は大きく膨れあがって独特な脈動伸縮を行うようになる。その様子はまさに鳥が好物とする芋虫のようだ。鳥は芋虫のように振る舞うカタツムリの触覚部分をついばみ、ロイコクロリディウムはまんまと鳥の体内へ侵入するのだ。ロイコクロリディウムが行う独特な伸縮運動は光刺激に反応して行われることが確認されており、暗い場所では伸縮運動がほとんど見られなくなるという。

”食べられるため”の巧妙な仕組みはこれだけではない。カタツムリは大触覚の先端に明暗を知覚できる程度の目を有しており、日中は暗い場所を好む生き物である。しかしレイウコクロリディウムに感染したカタツムリはこの知覚能力が奪われ、日中でも明るい場所に現れやすくなるのだ。さらに、ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリは、寄生されていないカタツムリに比べて寿命が長くなるという研究結果まで報告されているという。

鳥の体内へと侵入することに成功したロイコクロリディウムは腸に吸着して住みつき、消化物から栄養を吸収してやがて成体へと成熟する。そして鳥の体内で交尾し、卵が混ざった糞を食べたカタツムリを再びおぞましい姿へと変貌させる。光を奪われたカタツムリは、まるで死を懇願するように闇の中をさまよい続けるのだ。

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