素数の性質を利用しているかもしれない「素数ゼミ」とは?

2017年10月20日


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ガリレオ・ガリレイはかつて「宇宙は数学という言語で書かれている」と言った。フィボナッチ数列が自然界で多く観察されるように、あらゆる自然現象には数学的性質が隠されているものだ。北アメリカに生息している「素数ゼミ」と総称される数種のセミには、素数との不思議な関係性が見出されている。もしかしたら素数ゼミは、素数の性質を利用してこの過酷な自然をうまく生き抜いているのかもしれない。

北アメリカにはそれぞれ13年17年という長い生活史を持つ、通称「13年ゼミ」「17年ゼミ」が合わせて7種ほど確認されている。これらのセミは13年または17年ごとに地上へと姿を現し、繁殖を行ってその長い生涯を終える。彼らの子が成虫となり、再び地上に現れるのは13年または17年後のことだ。数多の昆虫の中でも屈指の長寿であるが、驚くべきところはそこではない。この13と17という数はぴったり素数であるからだ。研究者らは、これが単なる偶然ではなく何らかの意味があるものだと考えている。

例えば、捕食者の増減周期が関係しているかもしれない。ある生物の個体数が増加すると、餌が少なくなって個体数は次第に減少していく。個体数が減少すると、今度は餌が多くなって個体数は次第に増加していく。このように、生物には個体数の増減周期が見られるものがあるのだ。もし、天敵の個体数がピークの年と素数ゼミの発生周期が重なってしまうとどうなるのか。

天敵の増減周期が2年で、最も個体数が多い年と13年ゼミが地上に出てくる年が重なってしまった場合、次に重なるのは26年後となる。天敵の増減周期が3年なら次は39年後4年なら52年後5年なら65年後・・・と、このように素数であれば発生年に連続して襲われるようなことが少なくなるのだ。

もし13年ゼミの周期1年だけ少ない12年ならどうなっていただろう。増減周期が2年や3年,4年,6年の天敵には地上へ出てくるたびに襲われて、セミの個体数は徐々に減っていくことになるだろう。13という数が2,3,4などの数で割り切れない素数であるからこそ得られる利点なのだ。


Another Periodical Cicada flickr photo by treegrow shared under a Creative Commons (BY) license
外見はアブラゼミに似るが、鳴き声はアブラゼミよりも騒がしい。一部では食用として利用される。

他の説では、静岡大学の吉村仁教授の研究が有力視されている。氷河期の影響で森林が無くなり、わずかに生き残った素数ゼミの祖先は寒冷化の影響を受けて幼虫の期間が長くなった。やがて10年12年,13年,15年など独自の周期性を持つセミがいくつも生まれたが、ここで問題が発生する。例えば8年の周期性を持つセミ12年の周期性を持つセミ交雑した場合、周期性が少しずれた10年の周期性を持つセミが生まれるかもしれない。セミは天敵に対して攻撃または防御する手段を持っておらず、飛び方もあまり上手ではないことからも分かる通り、本来は大量発生することによってある程度の犠牲を出しながらも種を維持している生物なのだ。

もし8年ゼミと12年ゼミの発生する年が重なってしまうと、交雑によって別の周期のセミが生まれてしまうかもしれない。そうなると、8年ゼミと12年ゼミの子はそれぞれ少なくなってしまい、大量発生という唯一の繁殖戦略が失われてしまうことになる。こうして重なりやすい周期のセミ交雑によって徐々に数を減らして絶滅していき、最終的に他の周期と重なりにくい素数の周期を持つ13年17年のセミが生き残ったというわけだ。


Magicicada septendecim flickr photo by CrankyPK shared under a Creative Commons (BY-ND) license

日本に生息するセミが幼虫で過ごす期間は地中の温度が大きな影響を与えるため詳しい周期性はあまり明らかになっていないが、短いながらも3年,5年,7年といった素数に近い周期を持っていると推測されている。もしかしたら、私たちの知らない素数とセミの秘密は、まだ隠されたままなのかもしれない。

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