Sea Turtle on Turtle Beach Oahu, Hawaii flickr photo by Anthony Quintano shared under a Creative Commons (BY) license
毎年4~8月頃になると雌のウミガメは砂浜に上陸し、100個ほどの卵を掘った穴に産み落とす。この産卵の際に、ウミガメが涙を流すことはよく知られている。苦痛に耐えながらも必死に産卵を行う姿にこれまで多くの人が勇気づけられてきた。しかし、それはどうやら私たちの勘違いであるようだ。
ウミガメは餌を捕食する際に大量の海水を同時に飲み込む。取り込まれた海水の余分な塩分は濃縮されて塩類腺と呼ばれる器官から排出されるが、この塩類腺が目の近くにあるために涙を流しているように見えるのだ。つまり、産卵時に流すと思われていたあの涙は「体内の余分な塩分の排出を行うためのもの」なのだ。ウミガメは産卵前でも、海の中でもこの涙を流している。
ウミガメの持つ塩類線(salt gland)は塩類を排出するためだけに特化した分泌腺であり、他の海生爬虫類や海鳥などにもみられる。多量の塩分が取り込まれたときに機能して、腎臓よりも効率的に塩分調節を行って高濃度の塩分溶液を排出する。ウミガメではこれが目の近くにあるため涙を流しているように見えるが、海鳥の場合は目からではなく鼻から出る。
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浦島太郎がカメを助けたのは、きっとウミガメが涙を流していたからかもしれない。ウミガメの涙は人々の心に訴えかけるものがある。古くよりウミガメはその肉や卵は食用として、甲羅は装飾品として利用されてきたが、漁で獲れたウミガメに酒を飲ませて海へ帰したり、卵は一部だけを残しておいたりとウミガメを大切にする風習は日本各地で伝えられている。ウミガメの涙が塩類排出のためと知っていてもなお、産卵する姿に感動してしまうのはなぜだろうか。