テフロンは4次元の超立体構造を持つ?

焦げ付きにくいフライパンで有名なテフロン。正式にはポリテトラフルオロエチレンというフッ素樹脂のことで、テフロンはその商標名だ。


Frying pan flickr photo by JPC24M shared under a Creative Commons (BY-SA) license

英語名の”Poly Tetra Fluoro Etylene”から”PTFE”と呼ばれることもある。一般にテフロンというとこのポリテトラフルオロエチレンを指すが,広義には後述のデュポン社が製造するフッ素樹脂を総称してテフロンという場合もある。フライパンなどにコーティング加工すると焦げ付きにくいことで有名である。

テフロンは1938年にアメリカのデュポン社が実験中に偶然発見したものといわれており、物質が付着しにくい非粘着性をはじめ高い耐熱性や絶縁性,耐候性,耐薬品性などの多くの優れた性質からフライパンや自動車部品、さらには人工血管までありとあらゆる用途で使用されている。


Green Fluorite Crystal flickr photo by GorissenM shared under a Creative Commons (BY-SA) license

テフロンの原料はフローライト,和名では「蛍石」と呼ばれている。内部の不純物によって色は様々で,紫外線や加熱などによって発光する。これを硫酸と反応させて生成したフッ化水素酸にクロロホルムを反応させ,熱分解することによって得られるのがポリテトラフルオロエチレンだ。

さて、このテフロンは「4次元超立体の影のような構造を持つ」という話や「3次元では表せない結晶構造を持つ」といった話が一部で流布されているがこれは誤りである。

高次元で有名なアメリカの理論物理学者であるリサ・ランドールの著書『ワープする宇宙』には、確かに”焦げ付かないフライパン”に使用されている物質は高次元において規則的な性質を持つことが紹介されているものの、この”焦げ付かないフライパン”は準結晶物質を溶射コーティングしたフライパンを指しており、説明している物質は準結晶であってテフロンのことではない。

しかしあなたが高次元に興味を持ってこの記事を見つけたのであれば、その対象が「テフロン」から「準結晶」 にすり替わっただけの話だ。準結晶の発見は驚くべきもので、2011年にはイスラエル工科大学のダニエル・シュヒトマン氏が準結晶の発見によりノーベル化学賞が授与されている。準結晶の特殊な物質特性や結晶構造は高次元とどのような関係があるのだろうか――今後の研究が待たれるところだ。

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